文化の日というと、何か文化的なことを改まってする日なんだろうなあ、と、漠然と認識しているものの、具体的に何をやる日かよくわかっておらず、普通の休みの日として適当に過ごす人が多いかもしれません。
自治体などが、公民館等で「○○市民文化祭」みたいなものを開催することが多いようですが、他に何かお決まりの行事ってあるのでしょうか?
そういえば、一般庶民にはあまり関係ありませんが、ニュースを見ていると必ずやるのが、宮中で行われる「文化勲章」の受章式ですね。今年は日本人のノーベル賞受賞者が出たので、文化勲章のニュースでもその話題が流れていました。
文化勲章ってどんなもの
日本の叙勲者は、毎年8000人くらいいる
勲章といえば、国がくれる栄典ですから、そうそう滅多にもらえるものじゃないイメージです。
しかし、実際は、毎年8000人くらいの人が何かの勲章をもらっています。意外と大勢な気がします。
ほとんどが、「旭日章」と「瑞宝章」という、簡単に言うと長年同じ仕事で苦労して、公益に寄与してきたと認められた高齢者がもらうタイプの勲章です。
一年に1回、文化の日に叙勲が行われる文化勲章の受章者は、毎年5人位です。
冒頭でも書きましたが、ノーベル賞受賞者には必ず文化勲章も叙勲されることが慣例となっています。
宮中において天皇陛下自ら親授されるのを見ても、やはり何か“特別な偉いこと”を成し遂げた人、という印象が強いですね。
授与される実物の勲章とは
文化勲章の実物は、橘の花びらと曲玉を配したデザインになっています。
花のモチーフは、最初は桜を想定していたそうですが、文化勲章が出来た当時の天皇(昭和天皇)が、
との意向を示され、橘に変わったという話が、宮内庁担当の記者だった人物によって伝えられています。
橘は古代に都が平安京に遷都されたおり、宮中の庭に桜と共に「左近の桜、右近の橘」として植えられ、以来国の象徴のようになっています。
橘は永劫悠久の意味があり、文化の永久性を表現するのに最も適すると拝察される旨の言葉も記録に残されています。
文化勲章は、造幣局の熟練の職人さんたちによって、他の勲章共々、ほぼすべて手作業によって、ひとつひとつ長い時間をかけて作られます。
その技術の高さと美しい完成度は、芸術品としても相当に価値の高い物なのだそうです。
もし落としたりして壊してしまった場合は、造幣局で治してもらうこともできますが、費用は自己負担だそうで・・・意外とアフターサービス良くないんですね。
文化勲章には、漏れなく年金が付いてくる?
日本国憲法第14条第3項では、
「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。」
とされています。つまり、名誉だけで副賞はなし、ということです。
が、明治時代に初めて叙勲制度勲章の等級に応じて、終身年金が支給されていました。
今は、旧制度下の受章者の分も含めて、一切の年金は廃止されましたが、文化勲章受章者については、実はサラリーマンの平均年収くらいの年金が支給されています。
厳密に言うと、文化勲章受章者に支給されているのではなく、「文化功労者」への特典として支給されています。
文化功労者とは、昭和26年に施行された「文化功労者年金法」によって定められた制度で、「文化の向上発達に関し特に功績顕著な者」として選ばれる人です。
選ばれると年金を支給されます。そして、文化勲章の受章者は“文化功労者のうちから選考”することになっています。
ノーベル賞受賞者に文化勲章が授与される時も、同時に文化功労者として顕彰されています。
憲法に抵触しないよう、勲章と年金を直結させないために作られた制度にしか見えない気もしますが、憲法学上は、取りあえず問題なしとされているようです。
年金が付いてくるせいかどうかはわかりませんが、文化勲章の候補者の中には、叙勲を「辞退」する人も時々います。
文化功労者に選ばれること自体を栄典と受け取れないこともなく、そこに年金を付けることには、今でも憲法の精神にそぐわないと感じる人もいて、憲法学上はアリとなっているものの、違和感を表明する人はいます。
iPS細胞の山中教授の時も、青色発光ダイオードの中村教授も、ノーベル賞受賞後に日本の研究者の置かれている環境の厳しさについて訴えておられました。
文化勲章叙勲後、文化功労者年金がもらえるようになることで、少しでも研究継続がしやすくなり、後に続く研究者にとって励みになるのなら、良かったなぁという気もします。
とにもかくにも、受章者の皆さん、おめでとうございました。
日本の叙勲者にまさケロンが選ばれる日も近いかも?