ビジネス・経済

ボーナスとは?高額な日本の賞与には理由がある

Written by すずき大和

12月、クリスマスやお正月を前に、何かと出費のかさむ季節がやってきます。

でもその前に、サラリーマンの皆さんの中には

「ボーナス」

という救いが降りて来る人も多いでしょう。

夏休み前と年末直前の物入りの時季に、特別な収入チャンスを用意しておくボーナス制度って、実によく考えられた習慣です。

これって、日本独特の文化なのでしょうか?海外にも賞与制度ってある?

「ボーナス」って日本語じゃなさそうな響きですが、どこからいつ頃きた言葉なのでしょう?



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ボーナスの始まりと移り変わり

始まりは江戸時代。商家の藪入りや武家の仕着せが発端

江戸時代、商家の奉公人は住み込みで働いており、実家へ帰れる時は盆と正月だけでした。

奉公先からお休みをもらって故郷へ帰ることを「藪入り(やぶいり)」と言います。

藪入りの際は、商家の主人から、新しい着物を買ってもらったり、お小遣いを貰ったりすることがよくありました。

盆暮れの前に労働者にねぎらいをする習慣はそこから始まっています。

武家社会では、家来は住み込みとは限りませんが、盆と正月に新しい着物を着る風習は同じようにあり、この時季は他にも家計がいろいろ物入りになります。

その辺を補うように、武士の給与の中に「四季施[しきせ]」というものがありました。

季節に応じた着物(制服)を現物支給するものです。臣下への福利厚生みたいな慣習ですね。

仕事着の支給なので「仕着せ」とも書き、現在も「お仕着せ(一方的に与えられた事柄の意)」という言葉が残っています。

あまりいい意味で使われる言葉ではないところを見ると、家来の本音は着るものまで管理されるような拘束感は好まれなかったのでしょうか・・・・。

最初のボーナスは三菱商会

会社から従業員へ賞与の形で月々の給料とは別の臨時支給を初めて行ったのは、明治9年(1876年)の三菱商会であったと言われています。

三菱財閥を創設した岩崎彌太郎が、商売敵に勝って利益を上げた際に、社員の苦労に報いるために計らったものです。

社員へ告知した文章に

「別紙目録通り賞[しょう]与[あたえ]候[そうろう]」

とあったことから、臨時支給される金一封のことを「賞与」と呼ぶようになったそうです。

その後も、1年を通してよい成績をあげた社員に年末賞与を与える、などご褒美的な賞与を実施する会社はいくつもありました。

いずれも給与のせいぜい1~3割分くらいの金一封が一般的でした。

戦後になって、社会が安定して経済が成長してくると、盆暮れのねぎらい慣習を高額の定期賞与の形で復活させる企業が続出しました。それが現在の7月と12月の定期ボーナス制度として根付いていったのです。

ボーナスの語源は欧米先進国の臨時支給金「bonus」

特定の個人・・・目覚ましい業績があった従業員や、特定の役職以上の人たち対象に、ご褒美賞与を支給する慣習は諸外国でも見られます。

会社の業績が一定基準を超えた時にだけ行う国もあります。

ボーナスという言葉は、英語の

「bonus」

からきています。

日本でも大正時代から賞与のことをボーナスと呼ぶようになっていきました。

英語の語源はラテン語の

ボヌス(bonus)= 良いこと

で、これはローマ神話に出て来る成功と収穫の神「ボヌス・エヴェントス」に由来しているそうです。

イギリスやアメリカでは、ボーナスは業績に応じて支給される臨時のご褒美金の意味合いが強いものです。

日本のように賃金の一部として正社員全員に定期的に支給される国は、世界では少数派です。

しかも、他国では多くて給料1か月分が相場で、給料の数か月分という高額が支給される国は日本だけです。

日本独特の高額の定期ボーナス支給の実態

ボーナスがこんなに高額なのは経営者都合のため

日本は世界に類を見ない高額のボーナス制度があり、なんてラッキーなんだろう!と思いますか?

実は、日本のサラリーマンの年収における賞与の割合が高いのは、至って経営者側にとって都合のいい形の表れなのです。

実態は、全然ラッキーなことではありません。

簡単に言うと、給料は最低賃金や支払義務などについて、労働基準法などで厳しい縛りのある、労働者側に保障されるお金です。

一方賞与はそれらの縛りがないお金です。会社の業績が下がってしまった時、給料は会社の都合だけで勝手に下げたり支払いを遅らせてもらったりすることができません。

決まった期日に全額をきちんと労働者に支払わないと、法律違反となってしまう可能性が高いのです。

しかし、賞与は会社の都合で金額を増やしたり減らしたりすることがある程度可能です。

場合によっては“今回は支給なし”とすることもできます。

従業員の年収の中の高い割合を賞与で支給することにしておけば、会社は儲けが少ない年などに、人件費を減らすことが容易になるのです。

ボーナスが未払いになったら、労働者はどうなる?

日本では法律で賃金の支給は厳しく保障されています。年収6百万円のサラリーマンが翌年いきなり3百万円になることは、余程の理由がない限りありません。

だから、ボーナス払い付きの40年ローンで年収の10倍以上の不動産を買うことだってできるのです。

ボーナスが2回で給料の5か月分だったとして、会社の都合でそれがいきなり未払いになったら、ローンの支払が滞ってしまう人はたくさんいるでしょう。

賃金として支給される賞与は保障される

ボーナスが米英のような臨時のご褒美金の性格が強いものならば、賃金とは別のものと見なされるので、経営者の裁量で未払いにすることもあり得ます。

が、日本の場合は、景気による金額上下の調整弁として給与の一部を分けているのが実態であるため、実質は賃金である場合がほとんどです。

賃金とは、「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」
(労働基準法第11条)

と定められており、賃金でも給与でも手当でも賞与でも・・・名称を問わず働きに応じた正当な支払分として契約されているものすべてを指しています。

具体的には、就労規則や雇用契約書などに賞与の支払いについて定めがあれば、賃金に該当すると判断される場合がほとんどです(逆に、定めがないと認められない場合があります)。

賞与の支払い契約があるのに未払いになったら、労働者側は未払い訴訟を起こして支払わせることができます。

多くの企業は、あらかじめ賞与の支払い方を定めていますから、サラリーマンにとっては、給料は金額が約束された賃金で、賞与は一定の上下があり得る賃金、になっているのです。

ボーナスが高いのではなく、給料の割合が低いのです

実際未払いになったりはしないなら、ボーナスの割合が高いか低いかはあまり問題なさそうな気がしますか?

残業手当や深夜割増手当などの支払い金額は「基本給」を元に計算されるため、ボーナス割合が高いということは、それらの金額が実質の労働対価の時給計算(賞与と基本給の合計÷定時までの総労働時間)よりかなり低く見積もられているということです。

非正規雇用と正規雇用の賃金格差が実際の業績結果以上に大きいことが認められる日本では、賞与の割合の大きさが、正規と非正規の格差を大きくしている要因のひとつにもなっています。

アベノミクスで景気は回復傾向にあると言われますが、実際に潤っているのは大企業だけで、中小企業や非正規雇用労働者には物価と税金の上昇だけが堪える世の中です。

ボーナスが高いということは、大企業と経営者に都合よい社会の仕組みの反映のひとつです。

政治が大企業寄りなのは、企業や組織のまとめる票のほうが、自由意思で投票する人の数を上回っているためです。

賞与の額に一喜一憂するだけでなく、そういう事まで思いを馳せて、皆さんぜひ選挙に行ってくださいね。

「恩」や「しがらみ」に囚われない人の棄権率が高まるほど、世の中金持ちに都合よくなっていくのですから。

まさケロンのひとこと

ボヌス!!

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。