政治・経済

テロって何?ISじゃなくてウクライナの例で考えてみる

Written by すずき大和

2015年の年明け早々に、対岸の火事のように感じていた「テロの恐怖」を我々日本人も身近に感じずにはいられなくなる事件がありました。

中東の過激派組織IS(旧表示ISISもしくはISIL)による日本人人質殺害騒動をきっかけに、テロとの戦いの参加の是非や、人道援助の在り方や、憲法改正や・・・・いろんな話題が飛び交っています。

右とか左とか以前に、最近は、ネットに溢れる世界のニュースと日本のTVや新聞などに流れて来るニュースのニュアンスがちょっと違っていることも多く、何を基準に考えていいのか、よくわからない、という人も少なからずいるのではないかと思います。

総理大臣や偉い人が言っていることでも、理屈がよくわからない時や、疑問に思う点もあるかもしれません。

でも、それを言いづらい空気も感じます。

今更かもしれませんが、

  • テロって何?
  • なんで「許さない」の?

のわかり易い答えを探ってみました。



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そもそもテロの定義がよくわからない

自分たちの主張を通すために暴力に訴えること

だいたい現在の所、世界で共通する概念としては、「暴力や脅迫によって、政治的な目的を達成しようとする行為」のことを

「テロリズム」

と呼んでいます。

バックに組織的な政治活動グループ(時には国家)がある場合にテロと呼ぶことにしている国もあります。

現政権に反抗して不法な暴力手段に出ればテロ

イスラム過激化の殺戮イメージが強い人もいると思います。

が、政府のやり方を変えようと、何かを破壊したり妨害したりする行為がテロリズムなので、「無差別に複数の市民を殺害すること」という意味ではありません。

また、中東に限った話でもありません。

政府軍に戦いを挑み、勝って新しい政治の仕組みを作れれば、それまでのテロリストは「レジスタンス」と呼ばれ、革命軍として英雄になることもあります。

また、圧制で国民を抑圧する政権などが、反政府運動をする市民を弾圧することを正当化する時にも「テロ撲滅」という言葉が使われます。

南アのネルソン・マンデラさんも、非暴力で抵抗していたインドのガンジーさんさえも、政権に対抗していた時は「テロリスト」と呼ばれました。

ウクライナ情勢からわかること

テロリストは政権から見れば、いつだって「絶対に許されない」行為です。

そして、許さないために取られる鎮圧行動は、時として、更なる市民の犠牲を生むのが歴史の常でした。

ここで、目をイスラム過激派VS欧米有志連合から一端離してみます。2015年2月現在、混迷を極めてきた「ウクライナ問題」の中で主張されている

「テロとの戦い」

について見てみましょう。

ウクライナ人とユダヤ人が憎しみあってきた国

ウクライナは、元々ウクライナ人が多数暮す一帯にソビエト連邦崩壊後に生まれた国です。

ポーランドと旧ソ連(ユダヤ系民族住区)の境目だったこの地では、歴史の中で、力を持って支配する民族がウクライナ人になったり、ユダヤ人になったりを繰り返してきました。

支配する民族の方がもう一方の民族を迫害、大量虐殺し、形勢逆転した途端、報復として更に激しい迫害と虐殺が行われる歴史が延々何百年も続きました。

その間、民族間の憎しみと対立がどんどん深まっていきました。

ロシアより欧米のいいなりになる国になってよ

ウクライナとして独立国家になった後も、西は新欧米のウクライナ系住民、東は新露のロシア系住民と、今もはっきり民族と支持が分かれています。

東側には豊富な資源があり、ロシアから供給される天然ガスのパイプラインもあります。

ロシアはソ連崩壊後も、旧ソ連だった国には特別に安くガスを売って、経済を支援してきました。

ウクライナもロシアに経済的に依存していたので、政権も新露派が握っていました。

ところが、21世紀に入り、東側の資源が欲しかった西側欧米諸国が政権交代に干渉するようになります。

テロとは報道されなかった破壊活動

新露派が政権を取っていた2013年、欧米寄りの市民の一部が銃や火炎瓶などの武器を持ち、徒党を組んで破壊行為を重ねながら、政権打倒を訴えました。

政府は暴徒化した輩によるテロ活動と見なし「テロは許さない」と武力行使しました。

一方、欧米や日本とそのメディアはこれを「デモ」と呼び、政府の鎮圧行動を国際的に非難しました。

反ユダヤ活動家が政権を担う国になってもいい

欧米は2004年頃から干渉を始めており、実は一度、欧米派政権を作りました。

その際、ウクライナ人の民族意識に訴えて、ユダヤ人政権打倒の動きを高めようとしました。

対抗意識を煽るため、反ユダヤ主義を唱える政党も黙認しました。

ネオナチ党も含む連立政権にしないと過半数にならない、という理由もありました。

そうやって、親欧米派の政権が一度誕生しました。

欧米の本当の狙いはウクライナを財政破たんさせること

ロシアは、欧米寄りの政府が西側の豊かな国に激安の資源を転売することを恐れて、ガスの値段を上げました。

すると、ウクライナはあっという間に財政困難になり、経済破たんする方向に進んでいきました。

実はこれが、欧米の本当の狙いでした。

破たんしてIMFの管理下に置けるようにすれば、東側の資源から発生するお金が西側へ流れるようになり、ウクライナは経済的に欧米の勢力下となるのです。

もちろん日本も即支持しています。

欧米のいいなりにならなかったウクライナ

ユダヤ人への恨みから政権交代させたけれど、国民生活は苦しくなりました。

ウクライナ人もこれはおかしいと気付きました。すぐに、欧米に影で支援された新しいリーダーは賄賂をたくさんもらいまくっていたことがわかり、逮捕されました。

政権は再び新露派に交代しました。

どんどん露骨になった欧米の干渉

そんな状況の中、なぜかプロの訓練を受けたレジスタンスのような人たちによる破壊活動の暴動による反政府運動が始まったのでした。

国際的な支援を受けて現在は再び新欧米派政権となりました。

しかし、資源豊かな東側は財政破たんへの道に抵抗するため、次々と住民投票を行って独立自治を行うようになりました。

ウクライナ政権と欧米は、独立自治を支持して反発する市民たちと、ついに軍事物資の支援も含め独立派の支持に出たロシアを、テロとテロ支援国家として非難を始めました。はい、もちろん安倍政権も賛同支持を表明しています。

ウクライナは内戦状態になりました。

テロ非難決議に賛同するのは当然の正義!か?

もう一度書いておきます。

テロリズムとは、無差別殺人行為の意味ではありません。

そして、「テロとの戦い」に伴って起きる国家による無差別大量殺人は

“許される正義”

となり、巻き込まれる民間人死傷者は

“やむを得ない犠牲”

と言われます。

9.11.後、アメリカは「大量破壊兵器がある」ことを建前に、たった一人の反対者を除く全国会議員が賛成してイラク戦争を始めました。

結局大量破壊兵器はありませんでした。

アメリカとその支援国による空爆で、推定50万人とも60万人とも言われるイラク人が死に、そのうちの7割は民間人でした。

2月6日参議院はたった一人の棄権者を覗き、全会一致で「テロ非難決議」を可決しました。

棄権の理由のひとつは、「人質殺害事件の検証」をイラク戦争の総括を含んで十分に行う前に決議するべきでないという旨が発表されています。

そして彼は今、「テロは許せない」と言わない反逆者として、官民たがわず非難の的となっています。

なぜ「テロは許せない」のでしょう?あなたの納得できる答えは何ですか?

まさケロンのひとこと

大事なのは「やり方」だと思うんだ。結果を急いで暴力的なやり方をしちゃえば、それは許せないものになると思う。
時間はかかるかもしれないけど、本当に「変えたい」と思うなら、よく考えて欲しいな。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。