「老老介護」が現代社会の大きな問題となっていますが、「老老老介護」ともうひとつ老が付いた介護も無視出来なくなってきています。
このもうひとつの老は、
老いたペットのこと
を指します。
高齢世帯に高齢のペット。癒される面もありますが、高齢者にとっては世話をするのも大変です。
しかしこうした世帯は決して少なくありません。
飼い主に何かあったら、どうする?
まずは相談
人間は歳を重ねれば重ねるほど、身体のあちこちに支障が出るのは仕方ないこと。
でも入院や介護が必要な身体になってしまうこともあり得ます。
そんな時、飼っているペットはどうなってしまうのでしょう。
ペットにかかりつけ病院があるようなら、そこに相談してみるといいでしょう。
また各自治体にも相談出来る窓口があるかも知れません。
手放さなければならない場合
短期間の入院など、数日のことであればペットホテルなどに預ける手段もあります。
しかし老人ホーム等に入所しなければならないような場合は、残念ながら手放すことを覚悟しなければなりません。
高齢の犬の場合であれば老犬ホーム、そうでなければ動物愛護の団体等が引き受けてくれるかも知れません。
終身介護というかたちで面倒を見てくれる所もありますし、新しい飼い主を探してくれるサービスもあります。
ペット信託
その後のペットの生活を守るために
また最近注目されているのが「ペット信託」というシステム。
ペット信託をしておくと、飼い主が介護の必要な身体になったり、老人ホーム等に入所することになっても大丈夫。
もし飼い主が急に亡くなったとしても、ペット信託では予め新しい飼い主を決めておくので安心です。
飼育費用も確実に守られます。また「信託監督人」という役割の人を設定しておくと、ペットの様子や飼育費用を監督する為、その後のペットの生活は保障されます。
日本の法律ではペットに直接財産は残せないので、こういうシステムを利用してペットのその後の生活を維持してあげることが出来るのです。
会社を立ち上げる方法
信託方法は次の通り。まずは会社を立ち上げて行なうペット信託の方法から。
- 飼い主を代表とした管理会社を設立。
- ペットに残す財産をその会社に預けておく。
- 飼い主と管理会社が信託契約を結ぶ。
- 新しい飼い主を決めておく。
- 信託を開始する条件を定める。
- 実際に信託が始まると管理会社に預けた財産が飼育費用として新しい飼い主に託される。
この方法でペット信託を行なうのであれば、信頼出来る第三者に信託監督人をお願いする方がより安心です。
生命保険を利用
またプレデンシャル生命保険と三井住友信託銀行が共同で行なっている「安心サポート信託」を利用するという手段もあります。
飼い主がプレデンシャル生命保険の商品に加入し、三井住友信託銀行と信託契約を結びます。
飼い主が亡くなった後、ペットを預けたい動物愛護関係の団体等に保険金が飼育費として支払われるというもの。
この安心サポート信託はペットに財産を残す為に作られたものではありません。
幼い子や障害のある親族などの為に生命保険金を管理・保全しながら定期的に支払いをしてほしい場合や、自分が選んだ公益団体や法人等に自分の生命保険金を一定期間分割して支払ってほしいといったケースに対応するものです。
法定相続にとらわれず、自分が経済的に支援したい人の為にその財産を活かしたいという願いを叶えるシステムです。
これが自分のペットを守る手段に繋げられるとは、なかなか考え付きませんよね。
会員登録で様々なケースに対応
もうひとつは日本ペットオーナーズクラブの「ペットあんしんケア」。
この制度に飼い主が会員登録すると、会社側が飼い主に代わって信託会社と信託契約を結びます。
飼い主または同居の親族が、
- 1週間以上1年未満の入院
- 7日以上の海外旅行や長期の海外出張
- 認知症などでペットの世話が出来ない
- 長期的及び終身に渡り老人ホーム等で生活しなければならなくなった時
- 飼い主の死亡
以上の場合は動物病院がペットの預け先となり、信託会社が信託財産の中から飼育費用を払い込むシステムになっています。
ほかにも「一般社団法人ファミリーアニマル支援協会」というところがペット信託の普及を図っていて、飼育費等が適正に使われているのかどうかをチェックする信託監督人を同協会の会員らが引き受けてくれるようにもなっています。
ペットの健康を考えて
医療費が大きな負担になることも
ペットは人間と同じ生き物ですから当然病気にもなります。
意外と病院にかかる機会が多いと感じている飼い主も少なくありません。
特に犬や猫は高齢になればなるほど、いろいろな身体の不調が顕著になってきます。
手術や入院などになると、場合によっては十万円単位の治療費がかかることもあります。
ペット保険
そうやって考えると事前に入っておきたいのがペット保険。
犬や猫は高齢や大きな病歴がない限り、大抵の場合は加入OKの筈です。
保険会社によっては
- 鳥
- うさぎ
- フェレット
- ハムスター
- 爬虫類
までOKというところも。
その保険会社指定の病院で事前に健康診断を受けると、保険料が割引になるサービスもあるのです。
補償内容は通院・入院・手術・他人への賠償責任などが対象。
保険料は月々1,000円から3,000円程度が多くなっています。
寿命が延びています
医療の進歩やドッグフードの質が向上したことで、犬の寿命も長くなってきています。
2014年の犬の平均寿命は14.17歳。
10年前に行なわれた調査では11.9歳だったので、2年以上も延びたことになります。
かかりつけの病院によっては、定期的な健康診断をハガキ等で促しているので、病気などの異状の早期発見に繋がっています。
そんなことも平均寿命が延びている原因になっているのではないでしょうか。
ペットの介護
こんな症状があったら
でもどんなに医療が進歩しても老いることを止めることは出来ません。
人間と同じく高齢になるといろいろな症状が見られます。
犬の場合、名前を呼んでも来ない、無視するような時は耳が遠くなっていることが考えられます。
同じように名前を呼んでみたものの、こっちは向いているけど来なくなっている場合は足腰が弱っているか痛みがあるのかも知れません。
水分をやたらと摂りオシッコも多い場合は
- 糖尿病
- 腎盂腎炎
- 肝不全
- 腎不全
が疑われます。
急に攻撃的な性格になった時は脳腫瘍や脳の異状が考えられます。
認知症
それと同じような症状に認知症があります。
その症状としては動作が鈍くなったり、同じ所をグルグル回ったり、真っ直ぐに歩けない、昼夜問わず吠えるといったものがあります。
一時的に起きるものなら耐えられるのですが、これが連日続き、更に先が見えない状況になってくると、飼い主のストレスも限界になってきます。
介護の為に
家族同然に一緒に暮らしてきたペットですから、最後まで面倒をみてやりたいという思いがあっても、様々な事情から叶わないこともあります。
実際にペットの介護で仕事を辞めたり、頻繁に様子を見に行く為に職場近くに引っ越したりと、大変な思いをしている人もいます。
また昼夜問わずの介護の疲れから、体調不良やうつ病になってしまう飼い主もいて、悪循環から抜け出せずに悩んでいる人もいるのです。
頑張り過ぎないことも大切
愛するペットの為に頑張ることも大切ではありますが、飼い主自身が倒れてしまうようでは困ります。
介護を専門とする老犬ホームでは終身介護も行ないますが、1日預かりや訪問ケアなどを行なっている施設もあります。
またペットヘルパーやペットシッターを利用してみるのもいいでしょう。
介護用品もいろいろあります
ペットの介護用品も販売からレンタルまで様々な商品があります。
動くことが難しかったり寝たきりのペットには床ずれ予防の商品が数多く販売されています。
- 犬の場合は床ずれ予防のパッドが付いているドッグウェア。
- 足の床ずれを防ぐことに加え、関節の保護や冷え対策にもなるサポーター。
- 足腰が弱ってきた犬は段差で躓くだけでも骨折することがあるので、段差の移動を助ける為のステップやスロープ
なども販売、レンタルされています。
また歩行を補助するハーネスの種類もたくさんあり、車いすもオーダーメイドでの注文が可能となっています。
介護食の種類も豊富で、ちゃんと段階別に作られています。
大型犬の移動がラクに出来る
大型犬が寝たきりになると、その移動が大変です。
35kgまでの犬に対応している3WAYマット。
普段は犬が寝そべる用で、移動の時はマット自体にショルダー紐が縫い込まれているので、それを自分の肩にかけ、マットで包み込むように安定して犬を持ち上げることが出来ます。
二人で移動させる場合は簡易担架のようにして運ぶことも可能です。
ペットの介護をしてきた人、今現在している人の声が反映された商品だということが伝わってきます。
命と向き合って
それぞれのケース
- 飼い主自身やその家族が最後まで面倒を見てあげられるケース
- 止むを得ない事情から老犬ホームや動物愛護関係の団体等で介護を受けるケース
- 殺処分という方法になってしまったケース
3つ目のケースは絶対に避けたいものですが、ペットを捨てる人が多いのも事実です。
辛い現実とも向き合う取り組み
青森県にある農業高校では、殺処分された犬や猫の骨を砕いて土に返し、その土で花を育てる取り組みを行なっています。
骨が入れられていた袋の中には、毛が付着したままの骨や、生前していたであろう首輪の金具なども混じっているそうです。
それを目にしながら、黙々と骨を砕き、粉にしていく生徒達。中には泣いてしまう生徒もいるとのこと。
捨てられた犬や猫が殺処分されるという現実から目を逸らさずに、この取り組みを広げていくことで、一人でも多くの人に命の重さを伝えていけるようになるのでしょう。
介護するのは、誰なのか
ペットは玩具ではなく、人間と同じ「生き物」。
ケガもすれば病気にもなります。飼う前には思ってもいなかった事態になってしまうこともあります。
でも例えどんなことが起きようとも、責任を持って最後まで面倒をみる覚悟がなければ、ペットを飼うべきではありません。
ペットがケガや病気もしくは高齢になり自力で動けなくなってしまった時、誰がどうやって介護をするのか…。
そこまで考えて飼うのが、飼い主の責任ですよね。
ペット信託にも厄介なところはあるんだ。
会社を設立する場合、法人義務が発生するよね。(納税義務、通常費用の支払い)
ペットが亡くなったあとに会社の清算を誰に頼むのかも考えなきゃいけない。
生命保険の場合、ペットを直接の受取人にはできないのも難しいところ。
自分に合ったものを見つけて、ペットの生活を守ろう!