SFの世界では、アニメでもハリウッド映画でもゲームでも、人工知能が意識や感情を持って自我に目覚めたもの・・・
ロボットとかアンドロイドとかと人間が共存したり敵対したりする話が、ずっと昔から定番になっています。
日本では、「アトム」とか「ドラえもん」とか、人間の役に立つ友だちのような描かれ方のものがたくさんあります。
ハリウッド作品では、「スターウォーズ」のC-3POみたいなのもいますが、「ターミネーター」に代表されるように、機械が意識を持つとろくなことにならない類の結論に至ってしまう作品がほぼ毎年作られ続けています。
2015年の「アベンジャーズ」もそうですね。
実際に、私たちの未来はどっちに近づいているのでしょうか?
人工知能ってどういうもの?
実際の人工知能 Artificial Intelligence=AI
映画を見ていると、人工知能(以下AI)とは、人間みたいに振る舞う人間型ロボットみたいなのを想像しがちです。
が、AIとは、“人間の知能を持つ機械”ではありません。
これが、今実用化されているAIです。
- 「ペッパーくん」や「アシモ」みたいに自動会話で受け答えしてくれるもの
- 自分で考えて勝手にお掃除してくれる「ルンバ」
- Facebookで顔認知して「○○さんをタグづけしますか?」って聞いてくれる機能
みんなみんなAIです。
要するに、今ある情報をもとに、そこから自分で判断して行動を決定できる能力(知能)がある機械ですね。
「ロボット」は、機械工学という分野の研究です。それにAIの研究が合わさると、自分で考えて動くロボットが誕生します。
アシモやルンバはAI搭載ロボットです。
AIはどうやって考えているのか
専門家じゃないので、難しい説明はわかりません。
素人が理解している範囲をすごく簡単に大事な所だけ、オセロゲームに例えて説明してみます。
AIは黒、対戦相手は白でゲームしているところを想像してください。
盤上で次に黒を置く場所として、白が1個だけひっくり返せる場所と3個ひっくり返せる場所があったとします。
AIは「最後に黒が多ければ勝ち」というルールから考えて、3個ひっくり返せる所を選びます。
AIはこの時「たくさんひっくり返せる所に置く」という判断ルールをひとつ作るわけです。
しかし、対戦相手は次の手で、今3個が黒くなった並びを含んで5個を白にひっくり返せる場所に置きました。
するとAIは、次からは、自分がひっくり返した後、相手は次にいくつひっくり返すことができるようになるのか、までを計算して、逆転されそうな所には置かなくなります。
AIの中に「逆転されないように置く」という新しい判断ができたのです。
AIは
- “自分の中にある判断ルール(知識)に沿って行動を選ぶ作業”
- “体験した情報の中から、新しい知識を見つける作業”
これらを同時に、繰り返し行いながらだんだん判断力の精度を上げていきます。
考える作業は人間よりもシビアにやってくれる
人間は、一度体験して学んだはずのことでも、うっかり忘れてしまうことがあります。
また、判断しないといけないことがあまりにたくさんで複雑になると、いっぺんに全部のことを考えられなくて混乱することもあります。
混乱せずに正しい判断にたどり着ても、作業を実行する時に思ったとおりにできずにミスることもあります。
一方AIは、学習したことは忘れないし、見落とさないし、物凄い大量の知識を瞬時に判断することができます。
しかも故障等によるミスは人間のミスよりずっと少なく、作業は一律に安定しています。
情報を総合して判断して処理する、という類の作業については、AIは、もはや人間では追いつかないレベルの量をタフにこなしてくれるものになっています。
物凄く複雑で、計算では出せない不確かな予測が必要な場合の判断能力も格段に上がっており、ついにはチェスや将棋も人間がAIに負ける時代になりました。
AIの発達が人間の未来にもたらすもの
2045年問題
これだけAIがお利口さんになってくると、考えて処理する類の作業については、今まで人間がやっていた仕事をどんどんAIが代わりにやりだしています。
- 映画館のチケットも窓口ではなく機械で買える所が増えました。
- 翻訳はもちろん、長い文章を自動要約するアプリもあります。
- 国為替市場の取引をAIに任せている銀行もあります。
- ハリウッドでは、ストーリー作成ソフトで脚本作りをすることも珍しくないそうです。
このペースでAIと作業ロボットの技術が進んで行けば、2045年には全ての仕事をAIが担うだろう、とアメリカの発明家レイ・カーツワイルさんは提唱しています。
俗にいう「2045年問題」です。
AIが情報を集めて知識を積み重ねていける上限は限りなく、進化のスピードは物凄く早いので、このままいくと2045年には全人類の能力を合わせた能力よりも、1台のコンピューターのそれが上回ってしまうと予測されるのだそうです。
そうなると、新たなAIの開発すらAIが自分で行うようになり、もはや人工知能は知能だけでなく「知性」を持つようになる、と言われています。
「知能」と「知性」と「精神」
「知能」と「知性」の違いは何でしょうか?
わかりやすく言うと、理屈を考えて答えを出す能力が「知能」です。
既にある情報を総合して、その中にある「解き方の手順・法則」(これを「アルゴリズム」といいます)を見つけて、それに忠実に沿って決まった答えにたどり着く能力です。
「知性」は、簡単に言えば
というのがわかりやすいでしょうか。
今あるアルゴリズムに沿って判断するのではなく、自らアルゴリズムを作りながらどっちに行けば答えにたどり着くのか探し続ける能力です。
国語辞典で「知性」を調べると、
「感覚によって得られた素材を整理・統一して、新しい認識を形成する精神の働き」
と解説されています。
知性的に考えることは精神、つまり心が関連している、と哲学的には考えられています。
心とは、感情や感覚などの脳の働きと深く関わっており、「感性を持つ」ことや「カンを働かせる」ということも知性のなせる技だとされています。
答えがない問題に対処するには、感性やカンの働きという人間性が必要になってくるというのは、よく理解できます。
AIが知能を持つということは、心が生まれるということなのでしょうか。
自我に目覚めた機械は、暴走するのか
2014年、ウクライナ製のコンピューターが、理性があるかどうかのテストに史上初めて合格した!というニュースが流れました。
このコンピューターとチャットで会話した人の30%が、相手が人間かコンピューターかの区別がつかなかったと言っています。
“彼”は13歳の少年程度の知性と判断されました。すでにAIは心を持ち始めているのかもしれません。
ビル・ゲイツさんや、ホーキング博士などは、2045年問題を見据えて、AIがもたらす脅威に警鐘を鳴らす発言を発表しています。
映画ターミネーターでは、AIが知性を持って判断し行動し始めることを“自我に目覚める”と表現していました。
自我に目覚めた機械は、理不尽な理由で差別や対立を繰り返し、戦争や環境破壊を繰り返す人間を消去することが地球の平和のために必要だと判断し、世界中に核爆弾を落としました。
もしかしたら、このままAIの知性が高まり続けると、高度な医療プログラムが、
「ウィルス撲滅のためには感染する人間を消去してしまうのが一番いい」
なんて判断を下す日が本当にくる???
感情と理性を持つ人間と知性だけのAI
2015年の映画「チャッピー」では、知性ある警察官ロボットは、人間の与えた正義のアルゴリズムから脱することはありませんでした。
が、その中に初めて「感情」と「意識」を持つAI「チャッピー」が誕生します。
彼は、人間にコロッと騙されて犯罪者になったり、爆発する怒りのままに悪人を半殺しにしたりしました。
しかし、同時に愛に動かされて行動する機械にもなりました。
理不尽な戦争を止められない人間は、知性ではなく、感情にコントロールされて理性を失うことが確かにあります。
知性しかないAIからは消去した方が合理的に見えるのも無理はないのかもしれません。
しかし、そんな不条理の塊の人間たちを連隊させ、前向きに未来の希望を作るのもまた、人間の愛の精神です。
AIが知性を持った世界がどうなるかは、私たち人間が新たな「社会倫理」をちゃんと作っていけるかどうかにかかっているのかもしれません。
ドラえもんのいる未来を作ろう
羞恥心も虚栄心も恐怖心も嫉妬も劣等感も・・・・兼ね備えたドラえもんは、たまに理性を失って、ネズミを退治するために、ミサイルなんか出したりします。
藤子・F・不二雄先生の作品は、愛と希望に満ち溢れ、子どもたちの可能性を見守り続ける素晴らしいメッセージに満ちたファンタジーですが、やっぱり、あれが現実になると問題が多そうです。
どこでもドアとタイムマシンを個人で持ち歩ける社会で、犯罪を取り締まるのは相当難しそうですしね。
けれども、私たち日本人はやっぱり、ロボットと人間が共生できる未来は人間も地球も幸せになるはず、と、どこかで信じているような気もします。
最後に、2045年問題を明るく受け止めるホリエモンさんの言葉で、この長い記事を締めたいと思います。
「人間のようなAIは多分作られると思うよ。でもそれが人類の終焉になるとは思えない。人間っぽくなればなるほど人類を滅ぼしたくはなくなるはずだから」
ロボットが「お笑い」を理解して、人間とロボットで「お笑いコンビ」を組んだりする日もくるのかな。