東京西部の山間地とその手前のエリアを走っている「西東京バス」の路線バスに、2015年7月から、携帯やスマホの充電器をつなぐための電源コンセントが設置されるようになりました。
まだ全線ではなく、地域や便を特定せずに毎日3台の電源付きバスが運行されているそうです。
今後徐々に台数を増やし、11月までには23台を導入予定です。
東京ローカルエリアの路線バス事情
遠距離通勤・通学者のたくさんいる首都圏の郊外エリア
関東以外にお住まいの人は、“東京”と聞くと、何でも近くにあって便利でおしゃれで人が多くて・・・みたいな大都会イメージが大きいのでしょうか?
東京都は東西に長く、更にいうと島もあります。
交通網が網の目のように完備されて、買い物する所はいくらでもあって、夜中でも活動しているような便利な地域は、概ねひとつの自治体に人口が何十万人もいる特別区(23区)内の話です。
東京といっても、地味な印象の平均的な住宅地っぽい町も多いのです。
“三多摩地区”と呼ばれるだいたい半分から西側の地域は、下手をすると地方の大きな政令指定都市などよりよほど不便な所も少なくありません。
特に西東京バスのテリトリーは、東京の最西部、地図の上では半分以上が山間部エリアです。
用があって朝9時に都心の官公庁に登庁したいと思っても、始発バスでは間に合わないような奥まった所まで入り込んでいる路線もあります。
その辺の遠隔地環境は、地方の県事情とそんなに変わりません。
ただ、都心などへ遠距離通勤する人の割合は、もしかしたら地方の県庁所在地外にお住いの皆さんより、かなり高いかもしれません。
山間部やその手前のエリアまで行くと、歩いて行ける範囲に電車の駅のある場所に住んでいる人のほうがずっと少ないです。
が、車で都心まで行くと、渋滞や駐車場などの問題で時間やお金がバカみたいにかかるので、日常の生活にある程度の時間バス移動がかかせない人はたくさんいます。
都内(23区内)のバス利用はせいぜい15分くらいしか乗らないのが普通ですが、西部ローカルエリアは目的地まで30分以上バス移動はザラです。
最先端技術や話題のモノが集まる都心部ではなく、西部山間地エリアのバスが、利用者の声に応えて、先んじて電源導入に踏み切ったのは、ある意味順当でした。
利用者の反応は・・・?
今の所はあまりに少ない運行なので、まだネット内に一般利用者からの
という報告がほとんど見当たりません。
このエリア、学校も多く、高校・大学生のバス利用者が大勢いて、電源のリクエストの声も若者利用者からが多かったようです。
7月は学校が休みに入ってしまうので、利用者も減っているのでしょう。
夏休みがあけ、バスの利用者も電源バスの台数ももう少し増え、遭遇率が上がれば、利用実態の様子もだんだん見えてくると思います。
評判が良かったら、地方でも、スマホを四六時中いじっている学生層の利用度が高い路線を持つバス会社に、追従する所が出て来るかもしれません。
電源付き席とそうじゃない席があることの影響
いずれは都内の路線バスにまで普及してくる?
都内は、歩いて行ける範囲に駅がない場所は今やごく一部です。
生活圏の中に携帯会社のショップが一軒もない人は少ないでしょう。
- 公共施設
- 駅構内
- ゲームセンター
- カフェ
- ファーストフード
・・・など、コイン式充電ボックスや、充電器用電源コンセント等を供えた施設や店舗もあちこちにあります。
バスに乗る機会も乗る時間も短いので、電源バスの需要はまだそんなになさそうです。
が、しかし、コンセントの利用が促進されることに対し、学生たちの車内マナーに変化が出て来ることを期待する人のこんな意見もあります。
「コンセントのある席に若者が座りたがるようになる」
という傾向が出てくると、
「高齢者や障害者が立たないといけない確率が下がるのではないか」
というのです。
都内のバスの車内マナーの現状
都内のバスは、前述の通り、
“バスじゃないと行けない所に行くため”
とは少し違うニーズで利用する人が多い交通手段です。
通勤・通学時間帯は、さすがにサラリーマンや学生がたくさん乗っていますが、それ以外の時間は、
- 高齢者
- 障害者
- 子連れの人
- 荷物の多い人
・・・などが利用者の多くを占めています。
みんな近距離でも、待ち時間がかかっても、身体の負担を軽減するために乗らざるを得ない人たちです。
都下の郊外でもそうでしょうが、都心は尚更その傾向が強いです。
そのため、日中利用する大人の多くは、ほとんどが優先席になっている中央の乗降ドアより前の部分には座りません。
空いていても、あえてドアよりも奥、多い構造パターンでは段差を上がって乗りこまないといけない席まで行って座るのが暗黙の了解になっています。
その時空いていても、次の停留所、その次の停留所、そのまた次・・・で高齢者らが乗ってくると想像できるからです。
が、学生や普段あまりバスに乗らない感じの20代・30代くらいの人が乗ってくると、ドアより前の席が空いていれば、真っ先にそこに座る傾向があります。
他者の痛みを思いやるのは、本能ではない
バスの前のほうの席が優先席なのは、段差がなく、1人席や横向きの席で、立ったり座ったりしやすく、足腰が弱っている人や赤ちゃん連れの人がラクに座れるからです。
高齢者などは段差が上がれなくて、後ろの席が空いていても座りにいけない人も少なくありません。
人間の思いやりとか優しさというものは、社会性のひとつです。
誰にでも備わっている本能ではなく、育つ過程で学習しながら身に着けていくものです。
今の時代、親が教える他者との関わり方は、献身ではなく安全確保が重要視されます。
素性のわからない見知らぬ大人に自ら関わりになっていくようなことは禁止されこそすれ、推奨するようなしつけはしない考え方が主流です。
電車やバスで後から乗ってくる弱者のことを思いやる、というのは、誰も教えていない限り、若者に自ら配慮せよ、と求めても酷なことです。
他者と関わらない身の処し方ばかりさせられてきた人間が、見ず知らずの他人の立場にたってものを考える、なんてことが急にできるようにはなりません。
部活や塾で帰りが遅い今どきの子どもたちは、働く大人が疲れて帰ってくる姿や高齢者が弱っていく様子を身近に見ることもなく育つ子も増えています。
“そこの席じゃないと座れない”
という人の弱さなど想像できなくても無理ありません。
まあ、中にはそんな心配りができる若い人も居ると思いますが。
後ろの席に電源を付けることの効果
西東京バスの電源付きバスは、ドアより後ろの席の窓際の所に電源コンセントが付いている仕様になっています。
他のバス会社の路線バスにも同じ仕様で広まっていくとすれば、充電したい若者たちが、自主的に後ろの席に座る習慣になっていくのではないか、と期待する声があるのです。
本当は、思いやりや譲り合いの心で優先席を意識する人になってもらうほうか良いのでしょうが、現実問題として、家庭環境の中にそういう文化がない場合は、やはり難しいでしょう。
親の世代に変わってもらうのはもう無理なので、そんな誘導作戦を使ってでも、実質、高齢者が優先席に座わりやすくなることが促進されるのならば、いいのではないか、と考える人もいるわけです。
そのうち、充電するつもりがない人が電源付き席に座っているのを見て
なんてツイートする高校生が表れるようになったりして・・・・。
LINEを利用しない人が迷惑がられて批判される時代です。
充電したい人に気を配るマナーが新たに求められるようになる、という方向はあり得るかもしれません。
立ちながらでも充電できるようにしたらどうだろうか!
いっそのこと立ってる人だけ充電可能にして、座るか、充電するか、さぁどっち!ってのはどうだろう!