私たちが名前をよく聞く映画の賞といえば、「アカデミー賞」と、次点で「カンヌ国際映画祭」でしょう。よく名前を聞くこの2つの違いはなんでしょう?
「祭」と「賞」
カンヌ国際映画祭
イベント名に、「祭」と言う文字が入っていますよね。カンヌ国際映画祭は、同時開催で大規模な映画の見本市が開かれる複合イベントです。この見本市が開かれることから、開催期間は10日間ほどです。
- 映画館→エントリーされた作品の映画が上映
- 見本市→映画の製作会社によるブースが設けられ、そこでプレゼンやパーティーが行われる
アカデミー賞
イベント名前がアカデミー「賞」ですよね。アカデミー賞の場合は、テレビ中継がされ、にぎやかで華やかなイメージがありますが、行われるのは賞の授与式だけです。ですので、開催期間は1日だけです。
対象作品
カンヌ国際映画祭
主催がフランス政府で、映画祭の目的も、
- 映画が芸術として確立すること
- 映画製作のさらなる発展
です。このことから、大賞作品はフランス映画だけに限らず、世界中の映画から選ばれます。また、審査対象になるのは、劇場公開前の作品です。
アカデミー賞
アカデミー賞の場合、基本はアメリカ映画を対象とした映画賞です。作品の選考対象も、
「1年以内にロサンゼルス地区で上映された作品」
といった風に、とても限定された、ローカルな映画賞です。カンヌ国際映画祭と違い、すでに上映された映画が審査対象になります。
海外作品への取り組みの扱い
それぞれの賞に、海外作品に与えられる海外作品賞がありますが、それぞれの最高賞である、
- カンヌ国際映画祭のパルム・ドール
- アカデミー賞の作品賞
にエントリーするためにはそれぞれの条件に沿った作品でないと出品できません。
カンヌ国際映画祭
審査対象になっている作品が、
- カンヌ映画祭より12カ月より前に製作された作品であること
- 製作された国以外で上映されていない
- 他の国際映画祭で紹介されていない
以上の条件さえ満たしていれば、どこの国で製作された映画も審査対象になり得ます。
アカデミー賞
アカデミー賞の場合、審査対象になっている作品が、
1年以内にロサンゼルスで上映されたされた作品
であれば、アメリカ映画以外でもエントリーできます。アメリカの映画ではない宮崎駿監督の作品や、『おくりびと』がエントリーされたり、賞を受賞したのはこのためです。
受賞する作品の傾向
カンヌ国際映画祭
著名な映画関係者や文化人によって審査されます。第69回カンヌ国際映画祭では、審査委員長はマッド・マックスでおなじみのオーストラリアの映画監督、ジョージ・ミラーがでした。
シネファウンデーションという部門と、短編部門では日本の河瀬直美監督が審査委員長でした。他にも、フランス、イスラエル、アメリカ、アルゼンチンの映画監督や脚本家が選ばれています。以上のことから、芸術的だったり、映画としての完成度が高い映画が選ばれます。
アカデミー賞
ハリウッド映画の映画関係者が選考を行います。そのため、アメリカの国の事情や、その年の世論などが色濃く反映されます。また、賞の投票権を持つ映画芸術科学アカデミー館員は、ハリウッドの映画関係者が多く、映画評論家など、公平な審査をできる会員が少ないです。
結果、必ずしも芸術性が高かったり、完成度の高い映画が選ばれる、というわけではありません。
受賞作品のギャップ
世界三大映画祭の1つであるカンヌ国際映画祭で受賞した作品が、アカデミー賞ではノミネートすらされない理由がおわかりいただけたかと思います。
- 高品質で文芸的、芸術的な映画を見るならカンヌ国際映画祭の受賞作
- その年のムードを反映したエンターテインメント性の高い映画を見るなら、アカデミー賞受賞作品
と、いう風に考えられると思います。
ですが、他の映画祭、例えば、ヴェネツィア国際映画祭やベルリン国際映画祭などでも、エントリーされたり、賞に選ばれる作品がどうしても似通ってしまいます。
また、今の映画製作の主流はやはりハリウッドであるため、アカデミー賞ではハリウッド映画の大作が選ばれがちです。それでも他の映画祭とは違う観点で映画を選ぶことから、アカデミー賞はやはり注目度が高く、映画ファンとしては見過ごせない賞になっているのです。
このように、全く違う2つの映画祭ですが、どちらにも「共通」することがあります。それは会場の前に敷かれる
「レッドカーペット」
です。
レッドカーペットは、公式の催し事で、セレブリティーや、国家要人を歓迎するために敷かれるものです。たくさんの映画俳優や監督、映画関係者が憧れるレッドカーペットは、どの映画祭でも同じなのですね。
まだまだこんな素晴らしい映画があるんだよって教えてくれるカンヌ国際映画祭に「いいね!」