2015年は台風の発生の多い年でした。2014年6月から、2015年12月まで、19ヶ月連続で台風が発生したのは、観測記録が残るようになってから、歴代トップタイの記録でした。
が、2016年になった途端、パタっと発生が止まり、半年間全く台風が生まれませんでした。7月3日に1号が発生するまで、198日間台風知らずという、これまた歴代最長タイ記録を残しました。
急に減少した原因のひとつは、前年まで続いていた地球の「エルニーニョ現象」が、今年に入り収まったことが影響している、といわれます。台風についてはまだまだ解明されていないことがたくさんあるようです。それ以前に、台風のしくみや決まり事について、私たちは意外とちゃんとわかっていません。
ということで、今回は台風に関する基礎知識の勉強をしてみましょう。
台風は熱帯低気圧の仲間のひとつ
「台風のたまご」って知ってる?
南の海で「熱帯低気圧」が発生すると、「台風のたまご」と呼ばれます。
やがて“最大風速の10分間平均が秒速17.2m以上”に発達すると「台風」になります。
南の熱帯性気候の海上では、海の表面温度がとても高くなるため、大量に水蒸気を含んだ温度の高い空気が「上昇気流」をおこします。やがて、その中心に向かい、周囲の空気が反時計回りに渦になっていきます。これが、熱帯低気圧ができるしくみです。
台風は、温帯を北上するとだんだん勢力が衰えます。最大風速が秒速17.2mより小さくなると再び熱帯低気圧に戻り、徐々に消失していきます。
「温帯低気圧」に変わる台風
私たちが普段天気予報の天気図で見ている「低」印は「温帯低気圧」です。
南の暖かい空気と北の冷たい空気がぶつかることで生まれます。冷たい空気の上に暖かい空気が乗り上げていくような形で、中心から伸びる寒冷前線と温暖前線ができます。
台風が北上したとき、北から冷たい空気が入り込み前線ができると、温帯低気圧に変わる場合もあります。温帯低気圧には前線があるので、風雨の威力が弱まらずに、更に雨を降らせる低気圧になることもありますから、安心できません。
台風だけど「タイフーン」じゃない台風
「台風」と「タイフーン」は、厳密にいうと違います。
台風の定義は日本の規格です。
国際規格では、最高風速17.2m/s以上32.7m/s未満の熱帯低気圧は、
「トロピカル・ストーム」
と呼びます。
32.7m/s以上になると「タイフーン」です。
「台風」の仲間「ハリケーン」「サイクロン」
同じように発達した熱帯低気圧でも、地域によって呼び名が違います。
- 「台風」は、太平洋の北西部(東経100~180度の赤道より北)の海での呼び名
- 「ハリケーン」は、太平洋の北東部(西経180度以東の赤道より北)と大西洋での呼び名
- 「サイクロン」は、インド洋と南太平洋での呼び名
台風はなぜ曲がって進む?
台風は自分の力では動けない
台風は上昇気流によってできた雲の塊が渦巻きになっているものです。雲の塊は、自分の力で動いていくのではなく、地球上に吹く風にのって運ばれていきます。
地球は熱帯の熱い空気を極地へ拡散しているので、台風が生まれると最初は北に向かって進みます。やがて、日本の南にある「太平洋高気圧」を迂回するように、東から吹く「貿易風」に乗って少し西に曲がります。しかし、ちょうど日本の上空には、大陸から吹いてくる「偏西風」があり、今度はその風に乗って急激に東にカーブします。
徳島はうどん県じゃないじょ「複雑な動きをする台風」
風の強さや向きは、その時々の様々な条件によっていろいろ変化するので、台風の進路もその都度違ってきます。
中には、ふらふらと迷走するような動きをする台風もあります。
「複雑な動きをする台風」と呼ばれます。
7月の台風としては史上最大勢力といわれた2011年の6号も、大変複雑な動きをしたことで話題になりました。一度徳島県に上陸しましたが、突然東に進路を変えて、日本から離れていきました。ネットでは
「ちょっとうどん食べに寄っただけ」
という言説が広がり、「四国といえば、うどん県(香川県)」だと思い込んでいる人が多いことが露呈されました(笑)。
台風の名前は全部で140種類。○か×か?「越境台風」
海外のニュースで、ハリケーンやサイクロンは名前で呼ばれています。台風についても、台風の影響を受ける14ヵ国の政府間組織「台風委員会」で、2000年から名前を付けることにしました。
それぞれの国が10個ずつ決め、全部で140個の名前と順番が決まっています。2016年は、11号が日本の付けた名前「コンパス」になります。日本の名前はすべて星座名に由来します。
実はこの140種以外の名前が付く台風もあります。
台風は東経180度(日付変更線)以西の熱帯低気圧の名称ですが、日付変更線の向こう側で発生したトロピカルストームやハリケーンが、ラインをまたいでこちらに移動して台風になることもたまにあります。「越境台風」と呼ばれ、発生した時につけられた名前を継承します。
近い所では、2016.年の12号(ハロラ)や17号(キロ)が越境台風でした。
日本のニュースでも、もっと台風の名称を告知すればいいのに、と思いますが、順番や発生個数を気にする日本人には、番号のほうがわかりやすくて好まれるそうです。
トロピカル・ストームってなんか美味しそうだな~。でも台風なんだよね。