極寒の季節、雪国じゃない所にお住まいの皆さんは、交通機関の遅れの原因になる「雪」予報に敏感になってくる頃です。雪はちょっとの量でも、地面や電車の架線を凍らせることもありやっかいですね。
半端に寒いと、雨でも雪でもない「みぞれ」になることもあります。
そんなに寒くないのに、雪より大粒の「あられ」が降ってくることもあります。
ところで、初冬の季節、みぞれがふっても“初雪”と発表されますが、あられが秋にふっても“初雪”にはなりません。感覚的には、あられのほうが雪に近い感じもしますが。
空から降ってくるものは、どこからどこまで雪なのでしょう?
雪の定義って何?
日本には雪の名前がいっぱいある
- 細雪(ささめゆき)
- 粉雪(こなゆき)
- 粒雪(つぶゆき)
- 灰雪(はいゆき)
- 牡丹雪(ぼたんゆき)
- 淡雪(あわゆき)
- 玉雪(たまゆき)・・・・
降る雪を表す日本語はいろいろあります。積もった時の状態や降るタイミング、降る場所によっても様々な名で呼び分けられます。
定義が分かりやすいものもありますが、非常に情緒的、感覚的な呼び名や、地域が異なるとニュアンスが変わる名称など、アンニュイで微妙なものも多いです。
気象予報や観測・記録をするには、区別があいまいだと混乱します。天気に関しては、国ごとの決まりや、国際的に統一した言葉の定義が定められており、私たちが毎日見る天気予報で使われている用語は、これらのルールに則しています。
降ってきたものの呼び分け
天気予報では、上空の雲から降ってくるものを大きく5つに呼び分けています。
1, 雨 rain
“水の状態で降ってくるもの”は雨です。
降り方によって、「豪雨」「霧雨」「にわか雨」などの名称があります。
2, みぞれ sleet
雨に雪が混ざったもの。正確にいうと“解けかかっている雪”です。
3, 雪 snow
“雪の結晶(氷晶)状態で降ってくるもの”です。ベタベタもサラサラも、結晶がみられる氷粒は、気象観測上は全部まとめて雪です。
4, あられ hail
あられは、“氷晶がない氷の粒”です。“直径5mm未満の氷粒”がこう呼ばれます。複雑な結晶がある雪と比べると、含まれる空気が少なく、密度の高い氷の塊になっています。
5, ひょう hail
“氷粒の直径が5mm以上”になると、ひょう(雹)と呼ばれます。英語ではあられと同じ表現ですが、天気予報用語では分けて呼んでいます。
観測記録の取り扱い
予報文は、人が実感する天気の感覚を重視して言葉分けされています。一方、気象観測的には、科学的な違いの記録を重視する傾向があります。
あられもひょうも、降ってきたものは“雪”ではなく“雨”として観測されます。
みぞれは、雪の結晶が残っていないものも、全部“雪”と記録されます。
そして、降ってくる水分はすべて水に解かして“降水量”として換算されます。
大雑把にまとめると、
- 事象としては5段階で呼び分けられる
- 降水量の記録としては全部“雨”扱い
- ただし、天気としては、“雪”だけ特別に記録される
- 原則的に、“雪の結晶”が見られるものが雪
と考えるとわかりやすいでしょう。
雪誕生のメカニズム
始まりはいつも雪
空気中の水蒸気が水に戻って降り注ぐためには、実は、一度雲の中で必ず“雪”になっています。
空気中に含むことができるMAXの水蒸気量を「飽和水蒸気量」といいます。
温度が下がる程、飽和水蒸気量は小さくなり、空気は上空へ行く程、温度が下がります。
高い空の上の空気は温度が下がって飽和状態となり、過剰な水蒸気が水の粒に戻り、それが集まって雲になります。雲が更に上空に上がると水の粒は氷の結晶を作ります。雲の中で更に水の粒がくっついて凍り、複雑な雪の結晶(雪片)に育ちます。
雪片が大きくなってくると、重力で下に落ちてきます。下の空気が暖かいと、落ちる途中で雪片は解けて雨になりますが、気温が低いと雪やみぞれの形で降ってきます。
この時、上空に“上昇気流”が起きていると、落ちて解けかけた雪片がまた上に舞いあげられ、解けたところがまた凍ります。何度も舞い上げられ、解けたり凍ったりしていると、結晶のない密度の高い氷粒に育ちます。舞い上げられないくらい大きく重たく育つと降ってきます。粒が大きいので、多くが解けずにあられやひょうとして地表まで到達します。
雪じゃない氷、雪になる氷
上昇気流が起きやすいのは極寒の季節より夏場のほうです。気温が高いので雲の中の氷粒も溶けやすく、上昇気流で舞っているうちに、何度も解けて凍ってを繰り返して大きく育ちやすいです。そのため、あられやひょうは、冬より春や秋の方が多く見られます。
雪を雨と分けて記録するのは、気温や湿度の変化を把握するのに役立つからです。正確に季節の移ろいを知るためには、あられやひょうは雨扱いにしたほうが、雪データの精度が高まります。
寒い季節、地表近くの気温が上空より低いため、雨が再び氷粒になることがあります。
「凍雨(とうう)」
と呼ばれる現象です。見た目は透明な氷粒ですが、天気予報では“雪”として扱います。
また、空気中の水蒸気が昇華するダイヤモンドダストは、気象用語で
「細氷」
といいます。これも実は微小な氷晶で、晴れていても天気は “雪”と記録されます。
凍雨は地表の気温が0℃以下、細氷は氷点下10度以下で見られる事象です。十分雪の降る気象の記録になるといえます。
雪の名前こんなにあるって知らなかったな~。タイトル下のアイキャッチ画像は「粉雪」だよ。