泣き寝入りはもうやめよう
精神的・身体的苦痛
職場において上司や先輩がその立場を利用して、暴言や高圧的な態度などをとり精神的・身体的苦痛を相手にあたえることをハラスメントと呼びます。いまさら説明など不要なほど認知されている問題です。
細かく分けると30種類以上あるとされているハラスメントですが、なかでもセクハラやパワハラは特に身近で誰もが被害者そして加害者になり得る危険をはらんでいます。
ハラスメントという言葉さえなかった時代は、上司の言葉は絶対だ、という認識の下でどんなに罵倒されても、そして理不尽なことを要求されても歯を食いしばって耐える、そんな風潮が無かったとはいえません。
時代が変わり現在では相談窓口などの支援制度も確立されているようですし、社員教育などでハラスメントに対する意識を高め、防止に努める企業も多いようです。
それでもハラスメントはなくならない
このように社会全体でハラスメントに対する意識を高めていこうと努力が続けられているものの、セクハラやパワハラがゼロになることは残念ながらありません。
「ハラスメントに関する意識は十分ある、これはハラスメントではなく、仕事に対するミスを減らしてもらいたいための指導なのだ」
という考えから少しきつい言い方をした結果、指導した新入社員が出社しなくなってしまった。その社員は
「パワハラが怖くて会社に行きたくない」
と言っているらしい。
お互いのとらえ方のズレは簡単に修正できないものなのでしょうか。
費用から考える「ハラスメント」裁判
裁判はお金がかかります
「あれは指導だ。いやがらせとは違う」
「いいえ、上司の立場を利用した「いやがらせ」でした」
このように平行線をたどってしまうと解決法は限られてしまいます。
場合によっては裁判に発展するケースだってあるのです。
しかし裁判ともなるとブラックボックス的な部分が多く、例えば、どのような手続きが必要なのかなど詳しい人の方が少ないのではないでしょうか。
そこで今回は裁判にかかる費用について考えていきたいと思います。
裁判を起こすには、それなりのお金が掛かることは覚悟しておきましょう。費用に関しては「だいたいこれぐらい」という算出がしにくいデメリットがあります。理由は「相手に請求する金額によって、払うお金の額が変わってくる」からです。
裁判の費用は
- 裁判所に払う費用
- 弁護士に払う費用
の二つに大別されます。
裁判所に払う費用
裁判を起こすには訴状を裁判所に提出します。訴状には収入印紙を貼る必要があり、この印紙代が「裁判を起こすための手数料」のようなものになります。金額は前述しましたが相手に請求する金額によって変動があり、例として1000万を請求するのであれば5万円分の印紙が必要です。
その他には切手代も用意しなければなりません。これは裁判所が原告・被告双方に文書を郵送するときに必要になるもので裁判所ごとに金額は異なりますが、平均して5~8000円程度のようです。
さらには証人の旅費や日当も場合によっては発生します。日当というのは証人に仕事を休んでもらった補償のようなもので、相場はまちまちですがだいたい10000円程度です。
弁護士に払う費用
まず「着手金」を支払います。
裁判の代理人をお願いするための費用ですね。金額については後程説明します。
ちなみに着手金は裁判で負けてしまっても返してもらえません。
代理人としていろいろやってもらうのですから、これは仕方ありません。裁判に関連して出張などが発生した場合、必要な費用も負担しなければなりませんよ。
そして成功時の「報酬金」。
着手金もそうなのですが報酬金も金額は「請求金額」つまり「相手に請求した金額」に応じて決まってきます。
例を挙げると
請求金額が300万円だった場合、
- 着手金は8パーセント
- 報酬金は24パーセント
具体的には
- 着手金24万円
- 報酬金48万円。
これはあくまでも一例であって、依頼する弁護士によっても変わってきます。
ちなみに「請求金額」の目安ですが、ハラスメントの裁判においては300万円ぐらいが相場のようです。(精神的な苦痛に対しての慰謝料、残業代の未払い分などは含まず)
泣き寝入りは良くない。でも…
これまで見てきたように、裁判にかかる費用は決して安価ではありません。
もちろん泣き寝入りは良くありませんが、最終的な解決手段として裁判を起こす前に、話し合いで解決できないのかをもう一度考えることはできないものでしょうか。
ハラスメントに関する意識が高まっているにもかかわらず、ゼロにはならない要因の一つとして「相手の立場になって考える」ということが希薄になっているのではないか?
「褒めたほうがモチベーションが上がるタイプだったのかもしれない」
「きつい言い方だったけど、ミスを連発した自分も問題があるのではないか?」
お金がかかるから裁判を避けなさいというのではなく、ちょっと立ち止まってお互いが考えることで別の解決法が見えてくれば、それが一番良い選択肢になると思うのです。
お互い「コンチクショー!!」と熱くなりすぎず、いや一度なってもいいのかもしれないけど、しっかりと冷まして、ちゃんと考えてみるのって大事なことだよね。