2015年8月、
というニュースが流れました。これは、ひょっとすると、
「地球温暖化を防止するための究極の切り札」
となるかもしれない技術なんだそうです。
簡単にいうと、二酸化炭素の排出を減らそうとしても、人に今以上節約させるのはなかなか難しいので、この際、“出さないようにする”んじゃなくて、
“もうでちゃった二酸化炭素を浄化してしまおう”
という作戦に切り替える、って発想ですね。
二酸化炭素と温暖化と人類の文明の関係
地球温暖化って何?
「地球温暖化ってよく聞くけど、詳しいことはよくわからない」
という人のために、まずは簡単に、
地球温暖化
二酸化炭素
私たちの暮らし
の関係について整理してみましょう。
- 地球を取り巻く空気の中で、二酸化炭素・メタン・亜鉛化窒素・フロン・・・などのガスの割合が増えると、大気の保温効果が高まります。
- 人が便利で快適な暮らしをしようと開発を進める時、これらのガスが出ます。特に二酸化炭素の排出量は産業革命以降爆発的に増加しました。
- 便利な機械を使うためにエネルギーが必要です。発電も含め、人間はたくさんの燃料を燃やして、二酸化炭素をたくさん排出しています。
- 畑や家など、人間が暮す場所を作るために、これまでたくさんの森を伐採し焼き払ってきました。その結果、二酸化炭素を吸収して酸素を出してくれる植物が激減しています。
- 世界中で自然を開発して植物を減らし、資源を燃やしてエネルギーを作り続けた結果、大気中の二酸化炭素が増え、気温が上昇しています。
- これ以上気温を上昇させないためには、電気や燃料の使用を節約し、自然を回復し、二酸化炭素の排出を抑えないといけません。
二酸化炭素の増加の他にも.温暖化の原因・誘因はあります。みな人間による開発が原因で起きる問題です。
人類が自然を離れ、便利で快適な文明を発展させてしまったことが、地球に負担をかけてきた、ともいえるでしょう。
そのツケが、地球温暖化の形で表れているのです。
温暖化すると何がいけないのか?
では、地球の気温が上がると、どんな困ったことが起きるのでしょうか?
- 南極の氷が溶け、海水面が上昇することで、水没する土地(国)が出て来ます。
- 気象が変化し、世界規模で異常気象が発生しやすくなります。
- 異常気象の影響で、水害や干ばつも増えます。
- 気温が変わると動植物の生活環境が変わり、今までの生態系が崩れます。
- 植物の適応地域が変わると、今の農作物の収穫が減少します。
気温の上昇が始まり、高温地域が増えると、冷房の使用が増え、冷蔵庫や冷凍庫が使う電気の消費量も増えます。
電気をたくさん使うことで、二酸化炭素が更に増えます。そしてどんどん悪循環して、温暖化の速度は早まっていくのです。
早く止めないと、いずれは、今生きている地球上の生物の多くが絶滅することになるかもしれません。
温暖化防止のための世界の取り組み
1992年、国連のもとで世界の国々が地球温暖化を阻止するための取り組みをする条約が結ばれました。
その後1997年に京都で開かれた会議で、それぞれの国が
「今後どれくらい二酸化炭素を減らすか」
初めて具体的な数値を定めた議定書が作られました。
この議定書に同意しなかった国も含め、今では世界中で、二酸化炭素の排出量削減のためのいろいろな取り組みがなされています。
が、節電や技術革新を進めて削減目標を達成してあまりある国もありますが、なかなか思うように削減が進んでいない国もたくさんあります。
国際的な条約や議定書もくり返し策定・改定されていますが、1990年当時の全世界の排出量のレベルまでは、削減できていません。
日本は、最初の削減目標を達成するため、原子力発電の割合を増やすことを大きな柱とした削減計画を立てていましたが、東日本大震災に伴う原発事故以来、火力発電メインに戻ってしまいました。
事故直後に盛り上がっていた節電意識の高まりも、4年たつうちにすっかり薄れてしまった感があります。
一度手にした便利さや安全は捨てられない
電気をふんだんに使う生活は、
「豊かさや平和の象徴」
でもあります。
熱中症予防にクーラー設置を促したり、暗い路地に明るい街灯をつけて犯罪防止効果を得ることもあるでしょう。
医療用品は感染防止のために使い捨てが必要なものも多いです。安全で健康な生活を送る上では、電気の消費や環境への負担はある程度必要かもしれません。
また、便利さが気持ちよくて、必要のないサービスまで過剰に求めるようになる消費者意識というものも、限度がありません。
食品の小売りでは、より新しいものを陳列するために、配送(物流)の回数を増やしたり、まだ消費期限がある食品でも廃棄していかないと、商売の競争に負けてしまう、という現実があります。
慣れてしまった安全で快適で便利な生活を我慢してまで節電することは、人間にはなかなか難しいようです。
我慢しないで二酸化炭素を減らすための技術革新
便利だけど環境負担が少なくて済む物の開発
電気や機械を極力使わず、物はできるだけ使い捨てにしない、などの方向で努力するだけでは、なかなか二酸化炭素排出量は減らせませんでした。
便利や安全を享受しながらも、今までよりは環境負担の削減が可能な技術革新を推し進めることも重要です。
技術大国の日本では特に、
- 家電や自動車の省エネ化を進める
- 石油化学製品や金属製品のリサイクルをより効率的に改善していく
などの技術革新に大きな期待が寄せられてきました。
カーボンナノファイバーがプラスチックに取って代わる?
大気中の二酸化炭素からカーボンナノファイバーを取り出す、という発想は、そんな技術革新の目指すところのひとつです。
実は日本でも、三菱化学などで2000年代初めの頃から研究が進められていました。
カーボンナノファイバーは、
炭素
の原子が集まってできた物質です。
アルミの半分くらいの重さしかないのに、ダイヤモンドを超える強さがあり、よくしなる性質も持っています。
熱伝導性もよく、電気も通します。現在は自転車の部品やスポーツ用品などに多く使われていますが、今後はさらに建築資材や半導体などにも応用されるといわれています。
将来、製造するにも廃棄するにも環境に負担をかけるプラスチック等の石油製品や金属製品、コンクリートなどが、カーボンナノファイバーに置き換えられるようになると考えられます。
大気中の二酸化炭素濃度を減らす
そして、冒頭でも書きましたが、もっと凄い点は、大気中の二酸化炭素からカーボンナノファイバーを取り出せれば、その分、
すでに大気に放出されてしまった二酸化炭素を減らせるかもしれない、
ということです。
計算では、サハラ砂漠の1割程度の広さの施設があれば、地球のCO2排出問題は解決できるのだそうです。
今の所、カーボンナノファイバーを取り出す過程で、かなりの量の電力が必要であるため、環境負担のプラスマイナスはどちらにいくか微妙なところがあるようです。
取り出しまでにかかる時間の短縮、コストの圧縮も含め、その辺の改良も今後進んでいくと見込まれています。
もし、この夢のような取り組みが実現する日がくれば、世界は逆にカーボンナノファイバーの原料として二酸化炭素をどんどん必要とし、もしかしたら今度はCO2不足に陥ってしまうことが、ないとも限りませんね。
実際に、サハラ砂漠の1割くらいの土地にカーボンナノファイバー製造工場を作れるかどうかは、何ともわかりませんが、温暖化阻止はぜひ成功させてほしいです。
あ、ハイテク頼りするばかりでなく、出来る範囲の節電努力も止めちゃだめですよ、念のため。
今は地球温暖化対策のために二酸化炭素の排出をどれだけ減らせるかって方向でがんばってるけど、未来では二酸化炭素の排出をどれだけ増やせるかって議論が繰り広げられてたりしてね。