クリスマスはキリスト教の祭のひとつです。中世以前から社会の基盤にキリスト教があった西洋の人にとっては、とても特別な意味のある大事なイベントです。
日本には、「縁起」とか「神様のバチ」は何だかんだと気にするのに、「自分は特に信仰する宗教はない」と思っている人がいっぱいいます。だからなのか、異文化の宗教イベントも、躊躇なく祭として取り入れて楽しんでいます。実に大らかな宗教観の社会です。
宗教的な由来や意味など気にしないで習慣だけ真似ているうちに、本来とは形が変わってしまうことも出てきます。
「クリスマスにはフライドチキン!」
という常識も、日本オリジナル文化だということはよく知られています。外国映画でクリスマスのシーンを見ていても、誰もKFCに行列していませんから。その代わり、「七面鳥」とか「プディング」とか、何かしらの「お約束のご馳走」が出て来ることがたくさんあります。あれはあれで、ちょっと気になります。
クリスマスにはご馳走を
離れた家族が揃って過ごす大事な時
クリスマスは、キリスト教徒にとっては、
という感覚です。日本のお盆や正月みたいなものですね。
日本ではクリスマスイヴに恋人と過ごすのが理想のような雰囲気がありますが、
なんて欧米の人にいうと、下手をすると「可哀そう」と同情されます。
家族団らんのための盛大な食事会ですから「ご馳走」が基本です。
普段はそんなに食べない、
- かなり手の込んだ献立とか、
- いつもより奮発した材料
を用意するのが、だいたいどの国でも共通の文化です。
フライドチキンは、欧米人の感覚では手軽なファストフード、スナック感覚のものです。ご馳走イメージとは程遠く、日本人がKFCに行列するのは、国際的に見るととても特異な習慣に映るようです。
アメリカでメインのご馳走といえば七面鳥
日本でもよく知られているのは、アメリカでは
「七面鳥の丸焼き(ローストターキー)」
が定番のご馳走だということ。日本がチキンの習慣になったのは、この影響です。
七面鳥が滅多に手に入らない日本では、ローストチキンになりました。丸ごとのローストチキンを買えない、作れない家庭では、
「骨付きもも肉のロースト」
を家族の人数分買って帰るのが、昭和40年代までの習慣でした。フライドチキンに変化したのは、ひとえにKFCの商戦が当たった結果です。
国が違うと肉が違う
イギリスに行くと、七面鳥やチキンも食べられていますが、
「ローストビーフ」
がどうやら一番ポピュラーなようです。
ジビエの習慣があるフランスでは、
「ラパン(うさぎ肉)のグリル」
を食べる家庭も多く、この時期はたくさんの兎が市場に並びます。
カトリックの多いポーランドやチリでは、クリスマスイヴには肉を食べない習慣があり、
「鯉料理」
が伝統的に食べられています。(クリスマス本番は朝から肉料理のご馳走です)
鯉はフライがポピュラーですが、ムニエルやスープにする家もあります。新鮮じゃないとすぐ生臭くなる魚なので、この季節だけ、店頭では生きたままの鯉が水槽などに入れて売られています。
イタリアでクリスマスの特別な料理というと
「カピトーネ(雌の大鰻)料理」
です。普段の料理でも鰻は使われますが、クリスマス用は特別にこの大鰻を使います。
鰻は“悪魔の化身”と考えられていて、それを食べることは厄払いになるそうです。
北欧のスウェーデンでは、ハムのような豚肉
「ユールシンカ」
が定番です。ユールはスウェーデンのクリスマスのことです。
海洋国なので、
「ルートフィスク」
という鱈の料理もまた、ユールには付き物です。
同じ北欧でも、フィンランドでは肉や魚ではなく
「リーシプーロ」
というミルク粥がお約束です。とても身体が温まるそうで、寒い国ならではのご馳走です。
クリスマスのスイーツ
クリスマスにはホールのショートケーキ、は日本だけ
家族団らんには、ご馳走と共にお茶のおともやデザートも大切です。日本ではスポンジケーキに生クリームなどたっぷり塗ってデコレーションした
「いちごのショートケーキ」
が最も一般的ですが、外国では、もう少しシンプルな焼き菓子が多いようです。
イギリスではドライフルーツなどいれて硬めに焼いた
「クリスマスプディング」
と呼ばれるずっしりとしたケーキが定番です。独特の形が有名ですね。
馬屋で生まれたイエスを祝う意味で、飼い葉桶の形に焼く
「ミンスパイ」
もまた、イギリスのクリスマスの代表的なお菓子です。
フランスで19世紀に作られ始めた、太い薪の形に作る
「ビッシュ・ド・ノエル」
も有名です。由来はいろいろあるようですが、北欧のクリスマスで一晩中燃やされる巨大な薪にインスピレーションを感じたフランスのお菓子屋さんが作った、という説をよく聞きます。
最近よく日本でも見聞きするようになったドイツパンの
「シュトーレン」
は、ナッツやフルーツがたくさん入った硬めのパンです。ドイツでは、クリスマスの約4週間前に作ったシュトーレンを毎日少しずつ切って、クリスマスまでかけて食べきるのが習慣です。フルーツなどの風味がだんだんパンに移り、毎日味が変わっていくのだとか。
イタリアのクリスマスには、
「パネトーネ」
と呼ばれる、やはりナッツやフルーツがたくさん入った円筒形のパンが食べられています。こちらは、ふんわりフワフワの柔らかいパンです。
人型ジンジャークッキーだけじゃないクリスマスクッキー
欧米ではよく見る
「ジンジャーブレット」
と呼ばれる人型などに作るクッキーは、クリスマスツリーの飾りにもされます。
欧米には、プレゼントを持って来てくれるサンタクロースへの“おもてなし”として、クッキーと飲み物を枕元に用意する習慣があります。クリスマス用に特別に作るクッキーは、世界の多くの国に見られます。
スイスの
「ツィームトシュテルン」
は星型に焼いてアイシングを塗ったクッキーです。
ギリシャのアーモンドクッキー
「クラビエデス」
には粉砂糖が雪のようにかかっています。
クッキーではなくパイ生地を手裏剣のような形に焼く
「ヨウルトルットゥ」
はフィンランドのクリスマス菓子です。
所変わればご馳走変わる
主に欧米諸国のクリスマスの食習慣をご紹介してきましたが、南米や東南アジアなどに行ってもまた、その土地独特の様々なクリスマス料理やスイーツが食べられています。
クリスマスは、各地の冬至祭などの伝統行事とイエスの生誕祝を合体させてできあがった習慣なので、食文化の由来ももともとの民族の伝統文化に基くものが多いです。文化の数だけクリスマスの形やご馳走もあるのです。
ちなみに、ご馳走を食べるのもプレゼントを開けるのも家族揃ってお祝するのも、クリスマス本番の日がメインです。クリスマスイヴのほうが異常に特別視されているのは日本だけです。あれは、ひとえに山下達郎さんのおかげですね、たぶん(笑)
クリスマスが近づくとローストチキンがいろんなお店にたくさん並んでね、それだけでまさケロンは嬉しくなっちゃう。