食の豆知識

ピザてんぷらはなぜ流行らない?ご当地グルメの食文化ブーム

Written by すずき大和

文化というものは、常に変化していくものです。言葉や習慣、もてはやされる流行りのファッションやイデオロギーも、時代や場所が変わると、支持される形は違ってきます。

食文化も、比較的短い期間や狭い範囲ごとに、味や調理法や習慣が異なっているもののひとつです。関西人にとっては当り前の「うどんをおかずにご飯を食べる」習慣が、関東人には「なんか変」なことに映ることなど思い出されます。



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全国区化するご当地グルメ

伝統の食習慣は、所変わると邪道になる!?

「うどんとご飯」“あり”“なし”かは、昔から関東人と関西人の間に横たわる“深い溝”のひとつです。どちらも相手を論破することはできず、かといって、許容することもできず、議論してもほぼ平行線にしかならない話題です。

習慣というものは、理由や経過に関わらず、定着してくると「愛着」「安寧」が生まれ、そうじゃないものは、もう理屈ではなく感覚で「邪道」に感じるものです。

特に、食の習慣とは、

  • 異なる好みの人との間に、大きな距離を感じ
  • 共通する好みの人には、無条件に親しみと連帯を感じる

そんな大きなアイデンティティにつながっている場合が少なくありません。

メジャー化した『恵方巻』

地域独特の「ご当地グルメ」は、世界中にあります。中には、他所の地域の人が見ると「えっ!」と思うような食べ方でも、ある地域では伝統的なソウルフードになっている、というものもあります。

情報も物流も簡単に距離や文化を超えることが可能な現代、珍しい食べ方のご当地グルメも、他所の土地に紹介される機会が非常に増えました。ご当地内だけの習慣だったものが、思いがけず全国区に広まる現象もたまに見られます。

長い間大阪人だけの習慣だった「節分の太巻き寿司」が、ここ20年くらいの間に、『恵方巻』の名で全国区化したのは、典型的な例です。


しかし、全国多くの人がその存在や味を知っていながら、なかなか他の土地の人が真似しないご当地グルメもあります。例えば、北海道などで定番の『甘納豆入りお赤飯』は、有名だけど広まらない習慣のひとつかもしれません。


ユニークで美味しいけど広まらないB級アメリカグルメ!?

恵方巻はなぜヒットしたのか?

実は、恵方巻も、コンビニ戦略化される前は“知られていても広まらないご当地グルメ”でした。

例えば関東では、

「大阪の人って変わったことしてるね」

程度の受け止め方で、自分でもやってみようと思う人はほとんどいませんでした。

  • 食べにくそうなことこの上ないし、
  • 食べる姿はカッコ悪いし、
  • 太巻き寿司を1本無言で一気に食べきらないといけない

なんて、まるで“罰ゲーム”みたいに思えましたから。

コンビニ戦略が成功したのは、大きさを食べやすいサイズにして、ちょっとおしゃれなおやつイメージで宣伝したせいが大きいと思われます。

メジャー化しないものには理由がある

全国区化するかしないかは何が決め手なのでしょう?全体的に見ると、

  • 美味しい
  • 簡単
  • どこにでもある素材

そんな感じのものは、比較的広まりやすい傾向があるようです。

確かに、「B級グルメ」と呼ばれる“ジャンク”な感じのものは、流行りすたりはあるものの、話題となると真似して作る店が次々出て来ることが多いです。

普通のお蕎麦屋さんにはあり得ない『コロッケそば』が、スタンドそば屋の定番として普及したのもそんな感覚でしょうか。


最近では、『肉巻きおにぎり』が縁日の一大ブームになりました。


一方、

  • 好き嫌いが分かれる癖のある味
  • 面倒な手間暇がかかる
  • その土地でないと手に入りにくい素材

そんなメニューは、あまり真似されないようです。甘納豆お赤飯はまさにこんな感じです。

マンハッタンで人気の和食居酒屋メニュー

最近、インスタグラムで、マンハッタンの流行フード『ピザてんぷら』がちょっと話題になっていました。ニューヨークの和食居酒屋「酒バー萩」での人気メニューです。


ピザにてんぷらの衣をつけて揚げたメニューです。想像すると「えーっ」な人も多いのですが、食べた人たちの感想は、

「意外に脂っこくなくて、クリスピー」

「衣はサクサク、中はチーズがとろ~り」

などなど、「美味しい!」と大絶賛され、人気だそうです。

インスタグラムには、真似して自分でも冷凍ピザなどに衣をつけて「自家製ピザてんぷら」を作って、自慢している人もたくさんいます。

ピザてんぷら、なぜ広まらない?

実はこれ、店が開店した10年以上前からあるメニューで、現地ではずーっと評判でした。が、これまで他の店や日本にまで広まることがありませんでした。ジャンクな感じでそんなに美味しいなら、もっと広まりそうなのに・・・・。

もしかして、最近ヘルシー志向が顕著なアメリカでは、抵抗がある人も多いのでしょうか?

日本人が“和食”として「邪道だ!」と感じるのはわかります。これも主食のおかず化だし、そもそも和食屋さんで出されることに違和感がある人もいるでしょう。カリフォルニア巻(アボカドのロール寿司)の時ほど、「新・和食」としてすんなり受け入れがたいかもしれません。

でも、ちょっとだけ食べてみたいな(笑)

まさケロンのひとこと

見た目があとちょっと美味しくみえるだけで違うと思うんだよね。でも食べてみて美味しかったら見た目なんてどうでもよくなっちゃうか!

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。