そつなく気が回るタイプでもなくて、仕事の部下として使うには、どちらかというとあまり役に立たない感じの人のことを、
「うどの大木」
なんて揶揄することがあります。
『うど』は、育ちすぎて大きくなると、食用には向かず、かといって、柔らかくてしなるので、建築材などにも使えないため、「用を成さないもの」を例える慣用句になりました。
が、本当はうどは木ではなく草です。中心の所は木の幹ではなく「茎」なんです。3mくらいの高さまで育ってしまうこともありますが、野菜、というより「山菜」に分類される、季節の味覚です。
関東の特産品「うど(独活)」
白と緑
ハウス栽培や野菜工場での水耕栽培化が進んでいる昨今、一年中ずっと売っている野菜が増えていますが、春と秋は、「今しかない!」という旬の野菜が店頭に次々出て来る時季です。「春うど」は代表的な春野菜のひとつです。
地下などで完全に遮光して作られる、やわらかくて真っ白な「軟白うど」と、露地栽培や天然ものの「山うど」があります。光を浴びるとうどの茎は光合成で緑になります。露地栽培は下の方は土をかけて育てるので、ネギのように下半分は白っぽいですが、天然の山うどは全体に黄緑色になります。
軟白うどは晩秋から初夏まで出回ります。山うどは春が旬です。特に天然もの山うどは、4月半ばから5月にかけて、ほんの短い間だけ出回る激レア食材です。
関東の地場野菜
軟白うどは、関東から東北・北陸にかけての地域で栽培されています。栃木県・群馬県が2大産地ですが、数少ない東京地場野菜として、立川など多摩地域で作られる地下栽培の「東京うど」も有名です。
地下栽培の東京うど
山うどの露地栽培は埼玉県が突出して多く、続いて山形、群馬となっています。
天然の山うど
うどは関東の都市近郊農業の代表的作物のひとつです。
うどを美味しくクッキング
軟白うどは生が美味しい
冬の間出荷されている軟白うどは「寒うど」と呼ばれています。旬の春に出荷される「春うど」より甘味は濃いめです。独特の香りと苦味は春うどのほうが多く感じられます。歯触りは春うどのほうがやわらかいので、生のまま和え物などにすると、シャキシャキとした食感と香りと味をバランスよく楽しめます。
ポリフェノールを多く含み、抗酸化作用も高いのですが、苦味やえぐみが苦手な人は、しっかり水にさらしてアク抜きしてから料理しましょう。残念ながらポリフェノールは逃げてしまいますが、癖は弱まり、真っ白い色が黄ばむのも防いでくれます。
外側の皮の部分は若干固めなので、皮をむいてそれだけ別にきんぴらなどにするのもおすすめです。
山うどは下茹ですると後がラク
山うどは、軟白うどより香りも苦味も更に強く、癖があります。山菜好きの人には、その癖感がたまらない魅力ですが、小さい子や外国人にはちょっと食べづらいかもしれません。
長めに酢水につけてアク抜きすると、風味がたくさん失われ過ぎるので、一度さっと湯通しするように茹でると、甘味も濃くなり、苦味やえぐみが程よく抜けて、色止めにもなります。鍋に入る大きさにカットして、そのまま茹でましょう。皮も茹でてから剥くほうが簡単です。
皮はきんぴらや野菜いために、茎は生の軟白うどのように酢味噌や梅酢であえると美味しいです。
山などで天然のうどを自分で採ってくる人は、葉っぱも捨てずに、一緒に湯通ししておきましょう。えぐみのある緑の山菜は、油と一緒に食べるとマイルドになるので、炒め物やてんぷらにするといいでしょう。
穂先部分の緑のところも、てんぷら向きです。
ダイエットや塩分控えめな人向けヘルシー食材
うどは、含まれる栄養素は多いのですが、ほとんどが「水分」なので、栄養価はそんなに高くありません。低カロリーなので、ダイエットにはいいでしょう。
含まれるミネラルの中では「カリウム」が一番多いです。カリウムは余分なナトリウムをからだの外に出す働きがあるので、塩分控えめにしたい人には向いています。また、うどの香りの成分「ジテルペンアルデヒド」は、血液のめぐりをよくしてからだを温める効果があり、冷え性の人にはぜひおすすめです。
泥付きで売っている長い野菜なので、初めての人はちょっと面倒くさそうな気がしてとっつきにくいかもしれません。が、捨てるところが少なく、案外使いやすい野菜です。立川産の東京うどの中には、持ち帰りやすい短い長さの品種もあるそうです。
春から初夏の爽やかな季節を満喫する旬の野菜「うど」、楽しみましょう。
春野菜の「苦味」が欲しくなるときってあるんだよね~。