食の豆知識

アメリカのハンバーガーの異物混入がちょっと怖い!?

Written by すずき大和

日本には「恐怖のハンバーグ」という都市伝説があります。

細部のパターンはいろいろありますが、

  • 「ハンバーグの中から、切断された人間の指の先が出てきた」など、トンデモ混入物の話
  • 「牛肉100%と思っていたら、本当は食用ミミズ肉だった」など、原材料トンデモ説

のふたつにだいたい集約されます。

最近、民間による、アメリカのハンバーガーの成分調査発表がありました。ニュースの表題だけ見ると、日本の都市伝説を思わせるような結果にちょっとドキッとします。



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アメリカのハンバーガーの13.6%は表示に偽りあり!?

都市伝説はアメリカの話なのか?

2016年5月、シリコンバレーのバイオテクノロジー会社Clear Labsが、国内で売られているハンバーガー258個について、原材料や栄養価が表示されている内容と異なっていないか、DNA検査などの手法で明らかにしたレポートを発表しました。

「検査した商品のうちの13.6%に、何らかの問題が発見された」ということです。

  1. 表示と実際に使われた材料が違っている商品が、多数検出されました。
  2. 4.3%の商品から、病原菌のDNAが検出されました。
  3. ネズミのDNAが検出された商品が3点ありました。
  4. 人のDNAが検出された商品が1点ありました。

表示との違いは、偽装なのか?

表示の食材と異なっていた例は、次のようなものがあります。

  • ベジタリアン向け商品の14点は、実際には入っていない野菜が表示されていました
  • 肉パテを使った商品では、表示以外の肉が混ぜ物されている例が多数検出されました

また、栄養表示が異なるものも多く、全体の46%は表示よりも多くのカロリーがあり、49%は表示より多くの炭水化物が含まれていました。

これらの例は、残念ながら、明らかに、ヘルシー志向に付け込んだ偽装表示です。

が、しかし、ネズミや人のDNA検出については、

  • ネズミ肉を使ったパテを使っている
  • 切断された人の指が入っている

なんて都市伝説じみた話ではないようです。

表示にないDNAの検出=安全性の欠落ではない

実は、Clear Labs は、2015年にも市販のホットドッグの成分分析を行いました。その際、

  • ベジタリアン用代替え食品の10%から肉の遺伝子を検出
  • 全体の2%から人のDNAを検出

という結果となり、この時も、偽装表示や生産ラインの安全性が取りざたされました。が、この発表自体に懐疑的な意見も、多方面から出ました。

最近のDNA検査技術は大変進歩しており、もの凄く微細な量でも遺伝子を発見・解析することができるようになりました。今回のネズミや人のDNA混入も、非常に微細なもので、生産ラインのどこかで、ネズミの毛や糞、人の爪や髪の毛などが混入したものと思われます。

衛生管理には問題がありそうですが、都市伝説は否定できます。

ちなみに、健康に被害が及ぶ量でもないそうです。ネズミはともかく、人のDNAに関しては、製造や陳列の段階で、手袋などせず素手で扱うことがあれば、ある程度誤検出するのは避けられない、という専門家もいます。

また、同じ生産ラインを使用して、別の材料を使った加工品を作っている場合、どんなにきれいに洗って消毒しても、微細な量が次の加工品に混ざるのはやむを得ない、という指摘もあります。表示にない肉などが検出されたケースであっても、微量ならば生産ライン共有の影響が考えられます。

表示にない材料や人のDNAが検出されたからといって、それが危険かどうかはまた別の問題として考える必要があります。

情報の表面だけを見て安易に判断しないこと

過剰なヘルシー志向が不必要に危険を煽ることも

アメリカ社会では、ここ30年程ヘルシー志向の高まりが顕著で、最近はベジタリアン(肉や魚を食べない)、ヴィーガン(動物性食品全部食べない)がブームです。加工食品の安全性や健康効果にも、強い関心が向けられています。

そんな流れに乗って、食品の調査分析を行うベンチャー企業も複数出現しています。Clear Labs もそんなスタートアップ(確実性が低い段階から、高い成長を見込まれて資金援助を受け、設立したベンチャー企業)のひとつです。成長も期待されていますが、調査方法の精査が甘いなど未熟さの指摘もあります。

ハンバーガー調査にあたっては、

  • 原材料外のDNAの発見件数は発表しても、会社名は明かさない
  • 遺伝子組み換え食品の検査はあえてしていない
  • 加工途中で殺菌された病原菌のDNAも検出してしまう
  • 表示外の材料の検出が安全性の問題に直結するかのような発表

などの点が、消費者の不安をいたずらに煽っている・反らしている、という声が聞かれます。

日本はどうなのか

日本の商品調査は今のところ行われていませんが、偽装はともかく、微量なDNAの発見は同じような結果になるかもしれません。

日本の場合、アレルギーの問題が大きく注目されているので、微量でもアレルゲンの混入には神経質な面があります。最近では

「○○○を原料とする食品の加工と同じ生産ラインで製造されています」

などの警告がある加工品をよく見ます。○○○はソバ・小麦などのアレルゲンです。

ベジタリアン志向については、アメリカほど流行っていませんが、ブームが飛び火するようになったら、○○○に動物性食品の記入がされた表示も見るようになるかもしれません。

いつか日本で調査を行う日がきても、出てきた数字の意味を正しく読み解き、やたらに危険を煽る喧伝には乗せられないようにしないといけないですね。

まさケロンのひとこと

すごーく細かいこといったら大抵のもの異物混入してそうだよね。どこまで気にするべきかっていうのは難しいところだけど、あんまり細かいところ気にしてると、もっと大事なところ見落としちゃうかもしれないよ〜!

masakeron-oko


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。