「餅」と聞くと、日本人の多くは、もち米を蒸してついて作ったお餅を思い浮かべます。
餅は米を主食としている東洋の食文化ですが、日本以外の国では、この
「つき餅」
はあまり一般的ではなく、米や小麦の粉を水で練って加熱した
「練り餅」
が主流です。
日本でも、練り餅は練り餅で古くから親しまれています。
- 桜もち
- ヨモギもち
- お団子
- 大福
など、「餅菓子」と呼ばれ各地の名物にもなっている練り餅がたくさんあります。
お正月の雑煮に入れるのは、つき餅です。
が、最近の市販品の餅の中には、つき餅とそっくりなパッケージなのに、実は製造工程は練り餅だった!という商品がたくさん出回っています。
溶けるお餅でお雑煮を失敗しないために
お雑煮の中で餅が溶けちゃったことありませんか?
お正月のお雑煮用のお餅は、一般的には、年明けから餅つきした出来立てのお餅で作るわけではなく、暮れについて、切り餅やまる餅の形で保存しておいたもので作ります。一度焼いてぷぅーっと膨らんだものをおつゆの椀や鍋に入れていただきます。
練り餅タイプの切り餅やまる餅の多くは、つき餅と同じく焼くとぷぅーっとなり、焦げ目も付きます。
が、それを鍋で煮ると、多くが溶けてしまいます。表面がヌルヌルになり、おつゆが濁ってしまうだけでなく、モノによってはお餅の形が溶けてなくなってしまうほど煮崩れます。
安売りのお餅を買って、お雑煮をドロドロにしてしまった経験をお持ちの人、それはきっとお餅のせいです。
パッケージのぱっと見は区別がつきません
練り餅タイプのものは、つき餅と比べて値段がだいぶ安いものが多いですが、それ以外、ぱっと見ではわかりません。つき餅と同じように
「切り餅」
「まる餅」
「鏡餅」
と書いてあり、真空パック包装などされて売られています。
袋の表の表示には、
などの宣伝文句が書かれているものも多く、中にはわざわざ
「生切り餅」
と書いて、いかにもつきたてのお餅をパックしたかのような印象を与える商品もあります。
溶けるのはでんぷんのせい
いい餅菓子(米粉製のもの)は、もち米粉や上新粉(じょうしんこ)、白玉粉などを練って蒸した100%米の粉使用で作られていますが、練り餅タイプの切り餅等は、もち米粉を米以外のでんぷんで固めて作っています。
もち米粉だけで作る練り餅は、柔らかくてぐにょーんと伸びるあの食感にならず、団子や柏餅のようになってしまいます。つき餅っぽくするためには、でんぷんで粘りをプラスする必要があります。
しかし、でんぷんは水に溶けるため、お鍋の中でドロドロになってしまうのです。
見分けるのは原材料表示
日本では、米粉を使った場合は、法律で「もち米」「うるち米」ではなく
「もち米粉」
「米粉」
と表示しないといけないことになっています。
つき餅の場合、「水稲もち米」とだけ書かれています。
つき餅じゃない餅の原材料は、
「もち米粉」
「水稲もち米粉」
「米粉」
などと
「でんぷん」
または
「加工でんぷん」
と書かれています。
でんぷんで固めた餅の中には、つき餅を一緒に練り込んだものもあります。
「もち米」または「水稲もち米」の他に、
「もち米粉」と「でんぷん」
または
「加工でんぷん」
と書かれています。多少は溶けにくいかもしれません。
お餅の添加物表示
加工でんぷんて何?
米や芋、とうもろこし等の天然素材からでんぷんだけ抽出したものは、「でんぷん」と表示されます。「加工でんぷん」と書かれるのは、化学的処理で生成された成分が含まれたでんぷんです。
特に、多く使われる11種類のものは、「添加物」として指定されています。
「でんぷん」「加工でんぷん」と分けて2つ書いてあれば、加工でんぷんはまちがいなくこの添加物のことです。
pH調整剤は何を調整しているの?
練り餅タイプの餅の原材料表示では、
「pH調整剤」
または
「クエン酸」
という表示もたくさん見ます。
餅は中性だと腐りやすいので、添加物により弱酸性に加工しているのです。
つき餅の中にも、たまに「水稲もち米」だけでなく、これが入っているものがあります。
しかし、多くのつき餅は、クエン酸を使っていません。が、餅はカビたり腐ったりしません。そうならないための、加工段階での管理と配慮が大変厳しいメーカーが多いためです。
具体的には、工場で菌がつかないように加工し、そのまま菌をつけないようにパックしています。更に、もし微量に菌が残っていても、パッケージの中で死滅するよう、脱酸素剤を外装袋に入れてあります。ほとんどの菌は酸素がないと死にます。
溶けないお餅の多くは、企業のたゆまぬ努力によって無添加となっています。その辺も値段が高くなっている理由です。
上手に選んで使おう
お雑煮は、つき餅を使えば溶けません。
が、でんぷんで固める餅も、溶けやすく粘りが弱い特徴の利点として、小さい子や高齢者のように、飲み込みがうまくできずにのどに詰まらせる恐れがある家族には向いている、といえます。おつゆにとろみがつくと冷めにくくなるという利点もあります。
無添加にこだわる人にはつき餅をオススメしますが、気にしない人は、用途や目的に合わせ、上手に使い分け、家族みんなが楽しめるお雑煮を作ってください。
あえて「つき餅をつかわない」っていうのもアリか!若者もつき餅は喉に詰まらせないようにね~。