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コーヒーの2050年問題/温暖化でも平気にする?温暖化防止する?

Written by すずき大和

『コーヒーの2050年問題』って知ってます?

21世紀に入った頃から海外で度々話題にされてきましたが、2015年頃から具体的な未来予測の研究発表が相次ぎ、最近、一挙に深刻度と注目が高まってきた課題です。

ひと言でいうと、

“このまま地球温暖化が進んでいくと、2050年には世界のコーヒー栽培に適する土地が、現在の半分程度に減少する!”

ということ。30年後には、コーヒーは希少な高級品となるかもしれません。



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温暖化するとコーヒーが無くなるしくみ

コーヒーはとてもデリケート

赤道を挟んで北緯25度から南緯25度の間の地域は「コーヒーベルト」といわれています。世界の主要生産地はこのエリアの比較的高山地域にあるのです。

温暖であるだけでなく、雨期と乾期がはっきり分かれ、昼と夜の温度差も大きいことが、おいしいコーヒーが育つ重要な条件です。

コーヒーは、大きく分けて、

  • アラビアカ
  • ロブスタ
  • リベリカ

の3タイプの品種に分かれます。

世界で栽培されている7割はアラビアカ種です。香りがよくて酸味があり飲みやすいので、一番売れていますが、害虫や気候変動に弱く、栽培の手間もかかります。温暖化が進むことで、発育が悪化して品質が落ち、また、害虫被害や「さび病」という病気になりやすくなります。そして、やがては栽培が困難になっていくと見られています。

国際コーヒー機関では、世界最大の生産地ブラジルで60%、中央アメリカで48%、東南アジアで70%の栽培地が、2050年には栽培に適さなくなっていると予測しています。

エチオピアの状況

コーヒー豆とエチオピア


2017年、イギリスの研究者らが科学誌「ネイチャー・プランツ」に、多くのアラビアカ種の原産地であり、今も人口の16%がコーヒーで生計を立てているエチオピアのコーヒー栽培についてのリポートを発表しました。

代表的な産地ハラール地域では、すでに数百から数千ヘクタールのコーヒー農園が壊滅状態にあることがわかりました。温暖化の影響で、深刻な干ばつが進んでいるのです。今後更に栽培地の減少は進むと予測されます。

同時に、エチオピアには、多くの野生のアラビアカ種が潜在しており、更に高地へ灌漑などを進めて、より強い品種を植栽していけば、新たな栽培地を広げることは可能だ、という分析も発表されました。

が、小規模農家の生産者たちは、容易に新たな農地を切り開くことはできません。労働者の待遇の厳しさも相まって、他の職を求めていく離農者も増加しています。

また、開拓できたとしても、栽培地が山の頂上に達して以降も干ばつが進んでいけば、もう移動する先はなくなってしまいます。

研究者の1人は、エチオピアは2050年問題の世界の最先端にいる、といっています。ブラジルや東南アジア、アフリカなどの産地の状況も、遠くない未来、同じようにアラビアカ種の栽培地は壊滅していくと考えられます。

すでに始まっている世界の取り組み

メーカーの品種改良

世界の大手コーヒー産業では、2050年問題を克服するため、ロブスタ種も含めて、さび病や干ばつにも強い新品種の研究開発に取り組んでいます。

  • コーヒー店チェーンのスターバックス(アメリカ)
  • 食品会社のネスレ(スイス)
  • コーヒー製造販売のキーコーヒー(日本)

などが、広大な自社農園で多くの品種を研究し、新たな育種に取り組んでいます。

温暖化そのものは何とかできないのか

持続可能な社会?

一方、根本にある温暖化の問題を解決すべきであることは言うまでもありません。が、世界規模での二酸化炭素等「温室効果ガス」の削減は、簡単には進みません。

世界では、近年「持続可能な社会の構築」という概念が注目されています。

英語では「sustainability サステイナビリティ」といいます。

オーガニックな食材や地産地消にこだわって、生産過程やごみ処理段階で不要な温室効果ガスを産まないよう、買うものや暮らし方を選ぶ人が増えています。企業や国レベルでも、プラスチック製品の規制など始まっています。

しかし、散々エネルギーを使い、自然を開拓して豊かさを築いた先進国が先頭に立って呼びかけるサステイナビリティに対して、現在急激に発展中の諸国から、

「自分たちだけ発展優先して、後進に規制を求めるのは不公平」

という不満も起きています。

また、輸送のために温室効果ガスをたくさん出して、海外へ農産物を輸出することで、国の経済を成り立たせているのが、多くのコーヒー産地の現状でもあります。

消費はどんどん伸びている

日本では、ここ20年ほどカフェ文化が急激に発展しており、駅前には大手チェーンのコーヒー専門店が目に付くようになりました。コンビニやファストフードのコーヒーメニューのクオリティも上がっており、消費量が増大していることは、コーヒーをあまり飲まない人の目にも実感できます。

日本だけでなく、急激に経済発展している中国やアフリカなども、世界のコーヒー消費量をぐんぐん伸ばしている要因です。

最近の3年間、すでに世界の消費量は、生産量を上回っています。

コーヒーの2050年問題には、コーヒー飲まない人も含めて、文明の恩恵を受けて生きている人すべてが考えないといけない大事なことが、内包されています。

ちゃんと考えないと、庶民がコーヒーを飲めなくなるまでの時間はどんどん短くなるかもしれません。

(出典:気候変動がエチオピアコーヒーに波乱を巻き起こす

まさケロンのひとこと

コーヒー、お茶より飲んでるよって人もけっこういるんじゃないかな?100円で手軽においしいコーヒーが飲めるのが当たり前だって思わないで、ちゃんと考えたいね。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。