食の豆知識

「天津丼」はなぜ「天津」なのか? 実は中国には無い料理だったりする

Written by 言祝(kotoho)

大衆の味「天津丼」

ご飯の上にかに玉をのせ、餡をかけた料理、「天津丼」とか「天津飯」と呼ばれています。

店にもよりますが、あまり高価でないことが多く、とてもポピュラーな料理です。

筆者はよく食べますし、レシピもかんたんなことから、家族に夕食としてリクエストすることもしばしば。

本来はかに肉を使いますが、刻んだタケノコや椎茸だけでも十分お腹を満たしてくれます。

まさに大衆の味。でも「かに玉丼」とも呼ばれているこの料理、なぜ「天津丼」と呼ばれているのでしょうか?

天津が発祥の地なのか?

天津は、中国・北京市の近郊にある港町です。

港町といえば魚介類が豊富に穫れるとイメージできます。

きっと天津ではかにが豊富に穫れるので、「天津丼」はかにを使った名物料理なのだろうと思いますよね。

だけどラーメンの例もありますから、これは一度調べておいた方がいいですね。

ご存じのようにラーメンは日本独自の中華料理で、日本のラーメンのような形の麺料理は中国にはないと聞きます。では調べてみることにしましょう。



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やっぱり日本独自のものだった

中国には該当する料理はない。

Wikipediaや個人運営のブログなど、様々な情報源は例外なく、

「天津丼に該当する料理は、天津のみならず中国全土にも見あたらない」

と書いています。

ということであれば「天津丼」はラーメンと同様に日本で独自に発展した、日本オリジナルの中華料理といえます。

ではなぜ「天津丼」なのか?

名称に関しての由来ですが、日本がまだ物資不足だった時代にさかのぼります。

国内産の米がまだ十分流通していなかったころ、天津産の良質な米「小站米(シャオチャンミー)」を使用し、かに肉入り卵焼き乗せ丼という意味の「天津芙蓉蟹肉飯」という料理があったそうです。

「芙蓉蟹(フーヨーハイ)」という料理は広東料理として中国でも親しまれているものです。

この「天津芙蓉蟹肉飯」が省略され「天津飯(丼)」と呼ばれるようになったという説が有力です。

「天津飯」の発祥

発祥については2つの説があります。

東京・浅草の「来々軒」が発祥だとする説。

「来々軒」は1910年に浅草で創業、その後、東京駅八重洲口に店を構えた、伝説的な「大衆中華料理店」です。

「東京ラーメン」は当時の人気メニューのひとつで、日本におけるラーメン店の元祖ともいわれていますが、現在は閉店してしまいました。

天津丼に話を戻しますと、あるとき、お客さんから

「とにかく早く作れる料理はないのか」

とのリクエストがあり、たまたま店に手伝いに来ていた銀座の有名店のコックが「芙蓉蟹肉(かに玉)」を作りご飯に乗せて出したのが始まりというものです。

大阪城ちかくに開業した「大正軒」が元祖だとする説。

戦後の食糧不足のなか、客に出せる料理として店主が、天津の食習慣である

「蓋飯(皿に盛った飯の上におかずを乗せたもの)」

をヒントに考案したのが始まりというものです。

天津○○

中国の食文化をベースに日本独自で発展を遂げた「天津丼」。

いまではラーメンにかに玉を乗せた天津麺や、チャーハンと組み合わせた「天津チャーハン」などもあり、さまざまなバリエーションで楽しむことができます。

まさケロンのひとこと

「天津丼」って呼ばれたり、「天津飯」って呼ばれたり、「かに玉丼」って呼ばれたり。
いろんな名前があるけど、一番みんなに呼ばれてる名前はどれかな?
明日の夕食はコレで決まり!

masakeron-love


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筆者情報

言祝(kotoho)

映画オタク。日課は読書。最近は料理にハマっています。座右の銘は「好奇心を失ったら、そこで終わり」