年度末・年度始め 政治・経済

経済の話入門編/賃金上がらないのに消費税はなぜ上がる?

Written by すずき大和

年度末、ニュースはお金の話が熱くなる季節です。

2016年2月、安倍総理は、国会の予算審議で

「2017年春から消費税10%への引き上げは確実に実施!」

と宣言しました。一方、春闘からは、

「賃金改善があると見込まれる企業は46.3%」

というニュースが流れてきました。

半分以上の企業で賃金が上がらないのに、税金は確実に上がるって・・・

庶民の生活はこの先どうなるのでしょう。



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景気が悪いとは、人がお金を使わない世の中になること

インフレ:景気とは世の中に流れるお金の量のこと

経済とは、世の中のお金の流れです。

流れる量が多くなると“景気がいい”

少なくなると“景気が悪い”状態です。

人々が物をたくさん買えば、お金がたくさん流れます。

物やサービスがたくさん売れると会社は儲かり、給料も増えます。

給料が増えれば、物はもっと売れ、会社はまた儲かります。

こうして、次々お金の流れは増えていき、物の値段が上がります。これを「インフレ」といいます。景気がいいと、給料と物価が自然に緩やかに上がっていく世の中になります。

デフレ:物が売れなくなると経済の悪循環が始まる

人々があまりお金を使わないと、会社は儲からず、給料も増えなくなります。

人々はもっと物を買わなくなり、会社は売るために値段を下げます。

これが「デフレ」です。

物価が下がると会社の儲けも給料も減り、リストラされる人も出てきます。物はますます売れなくなり、値段も更に下がる、という悪循環「デフレスパイラル」が起きます。

バブル:売れすぎが突然売れなくなるとデフレスパイラルに

30年ほど前、インフレが続き、物価は凄い勢いで上がっていました。物が売れすぎて、値段も上がる所まで上がると、とうとうみんなが「もうこれ以上いいや」と買い物するのを控えるようになりました。これが「バブルの崩壊」です。

会社は急に儲からなくなり、儲けるつもりでたくさん投資をしていた会社は大損して次々倒産しました。世の中は急激にデフレスパイラルに陥っていきました。

アベノミクスで景気は回復しているのか

アベノミクス:会社が儲かるところから景気回復

安倍政権では、景気を回復させるために「アベノミクス」と呼ぶ政策を展開しました。

簡単にいうと、「会社が儲からない」「儲かる」に強引に変えることで、インフレへの逆転を図るものです。

具体的には、以下のような戦略を実施しました。

第一の矢:金融緩和

輸出企業を設けさせるため、世の中に出回るお金の量を増やして「円安」を誘導

第二の矢:財政出動

公共事業を増やし、企業の仕事を増やす

GDP:国内総生産の伸び率で景気判断

景気が良くなっているかどうかを具体的な数字で表すのに、「平均株価」「GDPの成長率」が使われます。

投資をする人たちは、儲かると思う企業の株を買いたがります。株の値段が上がるということは、それだけ会社が儲かっていることを表します。また、株がたくさん売れれば、投資という形で世の中に流通するお金を増やすことになります。

「GDP(国内総生産)」とは“日本で働いた人が稼いだ儲けのトータル”です。

3ヶ月毎に発表されるGDPの実質成長率は、2期続けてマイナスになると景気後退と判断されます。

2015年7~9月の速報値で、2期連続マイナスと発表されましたが、物価変動の影響を除いた実質値発表時プラスに改定されました。しかし、10~12月の速報値では、再び1.4%のマイナス成長と発表されました。

円高株安:2016年はさらに厳しく

マイナスの要因は個人消費の落ち込みが大きかったせいでした。政府はそれを暖冬のせいだと解説しています。が、日本経済はこれから更に苦境に入ると分析する人も多いです。

なぜなら、2016年に入り、海外の不景気の影響で「円高株安」傾向が進んでいるためです。更に、冒頭の通り、春闘では賃金の上昇が厳しくなるのは必須です。

最初の戦略の直後、円安が進み株価も上がりましたが、結局一時的だったのです。

なぜ消費税は上がるのか

少子高齢化社会:税金は減っても予算は増える

お金の流れは会社と人だけでなく、国にもあります。国が税金を集め、公共サービスにお金を使う流れも重要です。

少子高齢化が進む日本では、国の出費は増えていく一方です。

不景気は納税額も縮小しました。政府は、

「必要な公共サービスを維持するには、増税するしかない」

と考えています。それが消費税を上げる一番の理由です。

第三の矢:無理やりインフレにしても続かない

円安株高が進んだ時期、少しだけ会社は儲かり、物価も上がりました。が、賃金の平均額は消費税が8%になって以降下がっています。

実は、戦略には第三の矢「成長戦略」がありました。

“金融緩和で強引に円安にしなくても、会社が継続的に儲かるようにする”

ための戦略でしたが、そちらは効果的手立てがまだ打たれていません。

「インフレは、結局みんなが物を買うようにならないと無理」

「会社を儲からせたいなら、消費を増やす戦略が先」

と考える人たちもいます。

しかし政府は

「会社が儲かれば、いずれ賃金が増え、景気も回復する」

という考え方を変えず「アベノミクスの効果は出ている」といいます。

「賃金が上がる見込みがないのに、消費税は上がる、それなのに景気回復は可能だ」

とする政権のやることを、有権者は今しっかり見極めてジャッジしていく必要があります。

まさケロンのひとこと

会社が儲かっても賃金あげてくれるところがどれくらいあるだろうか、なんて考えちゃうよね。

masakeron-sorrow


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。