2016年6月、英国ノッティンガム・トレント大学の化学講師、クリストファー・アーサー・エドワード・ハムレット先生が、巷で語られてる言説のひとつ
「炭酸飲料の容器を開ける前に、トントンとタップすると、プシューっとならない」
が真実かどうか、科学的に説明するエッセイを発表しました。
という記事が、イギリスとオーストラリアの学術系キュレーションサイトに載っていました。
日常生活のウンチク・雑学の代表的な話
振っても爆発させないコーラの開け方
これ、日本やアメリカでも時々話題にされ、ネット動画やTVの情報バラエティなどでもよく取り上げられるウンチク話です。試しに
「振っても爆発させないコーラの開け方」
で検索してみると、YouTube動画やまとめサイトの記事がいくつも出てきます。
が、ネット記事には科学的な説明が上手にされているものは、比較的少ないです。難しすぎてよくわからなかったり、中には、どこかで読んだ解説を勘違いで解釈して伝聞してしまったらしい説明がついているものもいくつかありました。
ハムレット先生の記事の図解が、シンプルでわかりやすかったので、改めて、理系じゃない人にも優しい解説としてご紹介します。
なぜプシューっとなってしまうのか
まず、爆発する時、中で何が起きているのかをちゃんと整理しておきましょう。
炭酸飲料というのは、水やジュースなどに二酸化炭素が混ざっているものです。が、これは物質的にあまり安定している状態とはいえず、ちょっと振られると、二酸化炭素の気体の粒が、すぐに液体と分離して空気中に飛び出そうとします。
密封された容器の中で、二酸化炭素の粒が液体の外側へ出ようとして、缶やビンの内側の表面にたくさんくっついてきます。飛び出そうとして粒が中から押しているわけですから、内部の圧力は外より高くなっています。
ふたを開けた瞬間、中の圧力が一気に下がるので、気体の粒は膨張して、液体と共にあけ口から飛び出してきます。これがいわゆる「爆発」した状態ですね。
爆発させないポイントは、気体だけ先に出すこと
爆発する重要な要因は、
“容器の内側の壁面にたくさん二酸化炭素の粒がくっついていること”
です。液体を囲むようにびっしり並んでいた粒が、膨れながら出口に向かって押し寄せるので、液体もついでに巻き込んで飛び出してしまうのです。
爆発させないようにするには、液体を取り囲んでいる気体の粒(泡)を先に上の方に集めておけばいいのです。そうすると、あけた瞬間気体だけが先に飛び出してしまうので、下の液体は安泰です。
オーストラリアのキュレーションサイトに載っていた図解を載せておきます。
左の図が振ったあと、泡が壁面にたくさんついているところです。
右側の上が、そのまま開けてしまった時、下が泡を上部に分離してから開けた時です。
振っても爆発させない開け方の工夫
泡を発生させないようにしながら、今ある泡を上部にあげる
ということで、密封した状態のまま、
“いかにして壁面にびっしりくっついている泡と液体を上下に分離するか”
の方法を考えることが、「爆発させない開け方」の回答となります。
以下に、ウンチクとして出回っている方法のいくつかをあげておきます。
1, 容器の上部や周囲を“デコピン”する要領で軽く叩く。
要は、“新たに泡を発生させない程度の微細な振動を与えること”です。そうすると、泡が壁面から剥がれて上に集まってきます。
透明な哺乳瓶で実験している動画があったので、参考にしてください。後半では缶をデコピン叩きして試しています。
2, 容器を横に寝かせて静かに転がす。
壁面の一部が上部になるようにして転がすことで、ぐるりと泡を上部の空気の中に取り込んでしまうわけです。ゆっくり縦におこせば、自然に気体が上になります。
3, 容器をのどにくっつけてしばらく声を出す。
NHK「ためしてガッテン」で提唱していた方法です。声帯の微細な振動を容器に伝えるという発想が面白いですが、冷たそう(笑)
4, しばらく放置する
これが一番確実ですが、たぶんぬるくなってしまいます。
泡が消えるのは、二酸化炭素が液化したのではない
泡が上に集まると、上部の空気の中にどんどん気体が出ていくので、泡が消えていくように見えます。そのため、ネット記事の中には
- 二酸化炭素が液体の中に戻っていく(溶ける?)
- 泡が無くなってしまう
という表現で説明しているものがいくつもあります。が、二酸化炭素が液体に戻るわけでもなくなるわけでもなく、気体の層の中に混ざっているだけです。
そもそもちょっとの振動で溶けてしまうようなら、振ったら完全に液化して、泡が分離なんかしないでしょう。
まあ、一番は、冷蔵庫から出したら、振らないで静かにふたを開けて飲むことです。
泡をひっぺがして上にあげてやればいいんだね~。でもいつか炭酸が噴出さない画期的な容器が登場するって信じてるよ。