12月は餅つきの季節です。
自治会や子供会、商店街のイベントなどで、よく見かける餅つきは、人寄せやコミュニティの親睦を深めることが第一目的なので、ついたお餅のほとんどは、その場で参加者や道行く人たちにふるまわれます。
もともとは、年末の餅つきは、
お正月のお供え「鏡餅」と、三が日に食べる「お雑煮」
に入れる餅を準備するために各家庭で行われていました。現代では、市販品を買う人が増えましたが、お正月の餅の習慣はまだ健在です。
最近は、プラスチック製で毎年使える作り物鏡餅、なんていうのも売られています。が、さすがにそれって、神様のお供え物としてどうなのか?と思う人もいるようです。
最近の鏡餅、神様から見たら「罰当たり」じゃないでしょうか?
お正月のお餅は、どんな意味がある?
餅は神事に欠かせない縁起もの
稲作信仰が社会に根付いてきた日本では、お餅は神様へのお供え物であると共に、慶事でも弔事でも、神様の神聖な霊力がこもった縁起のよい食べ物とされてきました。餅は特別な祝い事やお祭などのハレの日の行事食です。
お正月に餅を食べるのも、神様に鏡餅をお供えし、同じ餅を人間も雑煮でいただくことで、福にあやかる意味があります。
鏡餅は神様の依り代
お正月には、「年神様」がやってきて、家族めいめいに新たな年の福を授けてくれるといわれています。年末のうちに松飾りやしめ縄を飾るのは、大晦日にやってくる年神様をお迎えするための目印や邪気を祓い清める意味があります。
そして、鏡餅は、お供え物の意味もありますが、やってきた神様がお正月の間宿る
「依り代(よりしろ)」(居場所のこと)
となるものです。
こんな鏡餅でも大丈夫?
買ってきて済ませていいの?
神様をお迎えするのに、餅つきする労を惜しんで市販品にするのは不謹慎でしょうか?
昔、杵と臼で餅を作っていた頃は、一度にまとまった量を作らないといけないし、スペースも必要です。庶民が核家族で長屋暮らしするなどのスタイルが発達した江戸の町では、すでに餅の外注は一般化していました。杵と臼を持参で代わりに餅つきしてくれる業者もいました。
もともと身分の高い人は自分で餅つきしませんから、手作りじゃないと手抜きだなんて、神様はそんな“幼稚園のお弁当”みたいなことはいいません。
鏡餅はいつ飾る?
よく見るのは、
29日は「二重苦」につながる
31日は「一夜飾り」になる
そのため、餅つきは避けよう、という情報です。
鏡餅の一夜飾りがいけない理由は、
“一日だけでは誠意がない”とか
“あわてて一日前に飾るのは、葬式の祭壇と同じだから”とか
いう説もありますが、本当は、
“年神様がやってくるのは大晦日の朝だから”です。
31日の昼間に飾ったのでは間に合わないので、できれば28日までに飾りましょう。
プラスチックケースの鏡餅で神様怒らない?
お餅の市販スタイルで最も変わったのは、パッケージでしょう。
昔は、簡易包装ののし餅、なまこ餅などを家で切り分け、(まる餅はそのまま)袋や容器に入れて保存しました。日持ちさせるため、干したり水に漬けたりもしました。最近は切り餅やまる餅を個別真空パック包装して売っています。
鏡餅も昔はむき出しで飾っていました。
1月11日の鏡開きには、カチカチにひび割れ、青かびが生えました。木槌で砕いてかびごとかき餅やお汁粉にして食べました。
衛生意識が高い昨今では、かびてしまう鏡餅は敬遠されます。
家庭では、二段重ねのまま真空パックした小型のものか、大型の鏡餅型のプラスチックケースの中に、個別包装のお餅がたくさん入っているものがよく買われます。
鏡開きの手間がだいぶ楽になりましたが、やはり神様は「手抜きだ」なんてケチなことはいわないでしょう。なんといっても年神様の正体は、ご先祖さまの霊ですから、子孫には優しいはずです。
ただし、全部プラスチック製のニセものは、怒られる以前に神様の依り代にならない可能性もありそうです。
歯固めの意味は薄れゆく・・・
ところで、鏡餅にはもうひとつ「歯固め」の意味がある、とする説もあります。
これは、正月に硬いものを食べ、歯を鍛えて丈夫にし、一年健康に過ごそう、という風習です。このために、お節料理にはあえてごまめなどの硬いものが入っていました。
硬くなった鏡餅を割って焼いて食べるのは、この歯固めの意味もある、という人もいます。
真空パックのお餅は、焼いても硬いというほど乾燥しないので、歯を鍛える意味合いは薄れそうです。
正しい飾り方ってあるの?
神様の居場所ですから、床の間など、家の一番奥まった上座に安置するのが好ましいとされます。玄関先では、家の奥まで福が呼び込まれないかもしれません。
正式には、三方に乗せて、
- 橙
- 裏白
- ゆずり葉
- 昆布
- 串柿
などの飾りつけをすることになっています。それぞれ縁起のいい意味があります。
が、「大小の円型の餅の二段重ね」という基本が押さえてあれば、台や飾りはあるもので代用していいとされています。円い形は、神器の鏡を模ったといわれています。
鏡餅は飾らずお雑煮食べるだけ、という人も昨今増えています。
せっかくきたのに居場所がなくて、年神様が帰ってしまったら、ちょっともったいない気もします。小さなものでも、1回くらい試しにお供え飾ってみても、損はないかもしれませんよ。
ご先祖様をお招きできる機会って1年でそうあるものでもないし、しっかりやってみよっかな!