世界には、「雪の妖精」やら「雪の妖怪」の逸話がいろいろあります。
イエティなど「雪男」の多くはUMA(未確認生物)なので、実在の可能性はあります。「雪女」や「雪の女神」などは架空のものですから、一般人はたぶん生涯遭遇することはありません。
ところが、日本の北海道では、目に見える「雪の妖精」が次々と生まれているそうです。
といっても、オカルトの話じゃありません。北海道ならではの冬の風物詩の中には、いくつか「雪の妖精」と呼ばれているモノがあるのです。
初雪を知らせる自然現象『雪虫』
10月の北海道に舞う冬を告げる妖精
10月に入って気温がぐっと下がってきた、ある良く晴れた暖かい日、北海道では
「雪虫(ゆきむし)」
と呼ばれる自然現象が見られます。
晴れているのに、大気中を白くてふわふわしたものが、雪が舞うように飛び交う現象です。
“雪虫が飛ぶと、その1週間~10日後に初雪が降る”
と、いい伝えられています。短い秋が終わって本格的な冬の到来を知らせる風物詩として、観光プロモーションなどでは
「冬の妖精」
「雪の妖精」
と詩的な名前で紹介されることもあります。
正体は実は害虫!?
雪虫の正体は、羽が生えて飛ぶアブラムシの一種で、一番ポピュラーなのは
「トドノネオオワタムシ」
と呼ばれる昆虫です。アップで見ると、こんな妖精です。
白いふわふわは、からだから分泌された蝋のような物質です。アブラムシの飛ぶ力は弱く、ふわふわが風にのって流されるように目的地まで飛んでいくので、余計雪のように見えます。
ふたつの木の間を行き来する虫
ヤチダモという木で越冬した卵が春に孵り、樹液を吸って成長します。2世代目のメスが7月にトドマツの木に移動し3代目を産卵します。夏の間トドマツの樹液で育った3代目が雪虫になり、10月にふわふわと飛んで、再びヤチダモの木に戻り最後の4代目を産みます。この4代目が翌春まで越冬する卵を産みます。
雪虫の移動タイミングはかなり正確で、初雪の直前の乾燥した暖かい日を逃がさず捉えて一斉に舞うため、突然の大量発生になることが多いです。
北海道の人は多かれ少なかれ、移動中に突然口や鼻の中に雪虫が飛び込んだ経験をしています。ふわふわのせいで、服や髪の毛にくっついても取るのが大変です。映像で見る分にはロマンチックにも感じますが、地元の人にとっては、実はあんまり嬉しくない妖精かもしれません。
可愛さにキュン死!癒しの妖精『シマエナガ』
ネットで人気となった雪の妖精
2015年ころから、ピントレストなどの写真投稿SNSで、北海道在住の人たちが撮影した「シマエガナ」という小鳥の写真が話題になっています。
一部本州での報告例もありますが、ほぼ北海道でしか見られない野鳥です。日本で最も小型の小鳥「エナガ」の亜種になります。
- 羽以外、頭も顔もからだも雪のように真っ白
- むっちりしたフォルム
- モフモフに見える羽毛に覆われたからだ
- 円い点のような黒い目とくちばしでカメラを見つめる表情
その絵面があまりに可愛すぎて、“癒され感”がたまらない!と、あっという間にネットで評判になり、いつの間にか「雪の妖精」と呼び名が付いて、画像が拡散されていきました。
SNSの画像をまとめた動画を作成する人も複数表れました。
希少さが人気に拍車
2016年になり、動物写真家の小原玲さんが、世界初のシマエナガ写真集「シマエナガちゃん」を出版したことも話題になっています。
関連グッズの販売を始めたオンライン会社も表れ、北海道では今後観光の目玉として押していく展開になりそうな動きも見られ、ちょっとしたブームです。
残念ながら、こんなに可愛くても、シマエナガを捕まえることも飼うこともできません。
絶滅危惧種指定まではされていませんが、北海道にしかいない希少な野鳥です。商業許可を出すと、あっという間に乱獲される恐れがあるため、法律で飼育も捕獲も禁止されています。
愛くるしい瞳の小鳥は、遠くからウォッチングすることしか許されない、北海道の自然に大事に大事に守られた妖精たちでした。
幻の白いトウモロコシ『雪の妖精』
フルーツのように甘い、シルバーコーン
さて、最後は“食べられる雪の妖精”をご紹介します。
2010年代に品種改良によって生まれた新種の真っ白いトウモロコシの品名が「雪の妖精」です。その美味しさと美しさが大評判で、近年大人気商品となっています。
本州でも数か所で生産されていますが、一番生産量が多いのは北海道です。
「シルバーコーン」と呼ばれる白粒種の品種のひとつで、これまで一番人気だった「ピュアホワイト」という品種の改良型です。とにかく糖度が高く、まるでフルーツのような甘さで、粒皮も柔らかく、生食もオススメだそうです。一粒が大きく、弾ける甘みが口の中に広がります。
なかなか手に入らない幻の白いトウモロコシ
白いトウモロコシは受粉の時に黄粒種の花粉が付いてしまうと、白くなりません。作る時に大変気を遣うし、広い土地の管理も必要です。現在はまだ作付け量が少なく、本当に希少価値の高い品種になっています。
記事執筆時は2016年年末ですが、2016年の収穫分はもうとっくに全国すべて売り切れ状態です。毎年予約受付開始後、あっという間に売り切れているそうです。
食べられる妖精は、まさに幻の逸品となっています。
「白」っていう色には不思議な魅力を感じるよね。
ところで、シマエナガちゃんはちょっと太りすぎじゃない?