知らなくても困りはしないが……
これの数え方、分かりますか?
大人の常識というものがあります。
もの、というよりも考え方と言い換えたほうがいいかもしれません。
大人だったら、当然知っている、身についている事柄のことです。でもその範囲はとても広くて、また人によって異なる解釈の仕方が可能なので、具体的に示すことが困難だったりします。
正しい敬語が使えるかどうかは、この「大人の常識」に当てはまると思います。
完璧な敬語が使える人って、ゼロとはいわないけれど、それほど多くはないと筆者は勝手に思っているのですが、それでも「社会人(大人)なら正しい敬語を使えるのは当たり前」という風潮、強いと思いませんか?
敬語ができていないと、会社などで結構厳しく注意を受けたりすることがありますからね。
さて突然ですがここで問題。
「羊羹(ようかん)の数え方を教えてください」
数え方というのは、例えば鉛筆は一本・二本、猫は一匹・二匹。自動車は一台・二台と数えますよね。羊羹の場合はどうでしょう、ということです。
一本・二本ですか? 間違いではないですが「本」以外で答えてください。
一丁・二丁? なるほど豆腐は一丁・二丁と数えますよね。豆腐と羊羹は形が似ているから、これはもしかしたら正解……ではありません。
答えは棹(さお)です。羊羹は一棹、二棹と数えます。捕捉ですがこの数え方は長い状態の羊羹で使います。食べやすいように切った状態は「一切れ・二切れ」と数えます。
では、「うちわの数え方を考えてください」
一枚、二枚ですか?
そんなに簡単なら、わざわざ問題にしません。えっ? 一うちわ、」に二うちわ、ですか? まじめに考えてください。
答えは柄(へい)です。うちわは一柄、二柄と数えます。
モノの数え方は「粋」だ
「数え方」と「浴衣」の共通点
「モノの数え方」は「大人の常識」のなかではユルイ知識になると筆者は思うのです。
例えば顧客の前で「羊羹が一本」と言っても後で上司に叱責されることはまず無いだろうし、うちわだって一本とか一枚と数えても、おそらく誰からも「間違っている」という指摘は受けないはず。
知らなくても別段困ったことにはならないし、知っていても得をすることは無い、ちょっと意地の悪い考え方ではありますが「モノの数え方」はそういう存在なのです。
そもそもどんなものでも「一個・二個」で通用します。でもあえて羊羹を一棹と数えたり、うちわの数を柄で表現したりするのは、とても粋だと思いませんか?
夏に浴衣を着て楽しむ人がいますが、あれだって別にTシャツ、短パンといった現在のファッションでも差し支えないわけで、むしろ浴衣を着ることで不便な部分も出てくるかもしれない、でもそこをあえて浴衣で通す。
「モノの数え方」にちょっとこだわってみるのは「浴衣の心意気」と共通するものがあるように感じます。
それでは他にも見ていきましょう。
鏡餅の数え方は
一据(ひとすわり)です。鏡餅のどっしりとした様子が「据(すわり)」という言葉でうまく表現されています。
風はどうでしょう。
風は一陣(いちじん)と数えます。「一陣の風」という表現はよく耳にしますね。
お墓の数え方を知っていますか?
お墓は一基(いっき)と数えます。この「基」という言葉は橋などの大きな建築物を数えるときにも使われます。
箸は
一膳(いちぜん)と数えます。これは「数え方」の中では比較的ポピュラーなものです。コンビニなどで「お箸は一膳でよろしいですか」と聞かれたことがある読者も多いと思います。
雷は
一閃(いっせん)と数えます。でも雷を数えることってあまりないような気もしますね。
最後に、神様はどう数えるかご存知ですか?
一人、二人?
うーん、相手は神様ですから、人間と同じように数えたらばちが当たるかもしれませんよ。
神様は一柱(ひとはしら)と数えます。
ちなみに便器は一据(ひとすえ)になるんだけど、鏡餅と漢字が一緒だ・・・でも読み方違うぞなんだこれ。日本語難しい~。。