夏の暑さに負けて、だるくなったり、体力が落ちたり、自律神経が不調になったりする症状を「夏バテ」といいます。そんなお疲れ気味の身体を回復させるために、
「スタミナの付くもの食べましょう」
ということがよくいわれます。
「スタミナ」とは、一般的に
- 体力
- 精力
のこと、というイメージがあります。
なので、カロリーの高いもの(エネルギーの元)を食べるとスタミナが付く、という気がしている人がたくさんいます。野菜や魚よりは、肉やウナギなど、脂肪やタンパク質が多いガッツリ系の食事を思い浮かべるケースが多いでしょう。
一方で、外食産業で「スタミナ○○○」というネーミングが付いているメニューといえば、ほぼ9割方「ニンニク料理」のことです。ニンニクは、古今東西「スタミナが付く食材」の代表とされてきました。
しかし、ニンニク自体、野菜ですし、カロリーが高いようには見えません。いったいニンニクの何がスタミナ栄養源なのでしょうか?
スタミナとは「体力」「精力」のことじゃない
スタミナがある・ない、の意味するところ
スタミナは英語の「stamina」からきています。
本来の意味は、漠然とした「体力」「精力」という概念ではなく、具体的な身体能力のことを指しています。それは、
『持久力』
と訳されています。
専門的には、
- どれくらい身体に酸素が摂り込めるか?
- どれくらいの運動量になると血中乳酸(疲労物質)濃度が急激に高まるのか?
- 同じ量の運動をするのに、エネルギー消費の効率はどれくらいか?
という3つの視点から、数値化できる反応を比べて判断します。
なんだか小難しいですが、これらの数値が表しているところを簡単にいえば、
スタミナがある・ない、とは
“疲れにくい(疲れが回復しやすい)か、
疲れやすい(回復しにくい)か”
と、いうことです。そして「スタミナをつける」とは
“疲れにくくする”
“疲れを素早く回復させる”
ことを意味します。
ニンニクとスタミナ
ニンニクと人類の付き合いは大変古く、紀元前4000年の古代エジプトの遺跡から、ニンニクの粘土模型が発見されています。ピラミッドが作られた時代の記録では、労働者の日々の活力の源として、ニンニクが食べられていたことが記されています。
メカニズムは解明されていなくとも、
「ニンニクは疲れを回復させる」
「食べると元気がでる」
という効果は、古代社会で既に広く認識され、ニンニクは日常的に食べられていました。
また、殺菌効果や血流促進効果、自律神経の働きを促進する効果についても知られ、にんにくは傷の手当てから胃薬まで、万能薬のように扱われていました。
これは、東洋世界でも同様で、中国では、「にんにくに勝る薬・食品はない」といわれるほど珍重されていました。
日本には4世紀頃中国経由で伝わり、香辛料や強壮剤のように扱われていました。日本の仏教では、性欲などの煩悩は修行のさまたげと考えられていたため、強壮剤の効果がある、ネギやニラ、ニンニクなどの野菜は、僧侶が食べてはいけないものでした。
ニンニクを食べるとなぜスタミナがつく?
ニンニクの匂い成分
ニンニクといえば、独特の強い臭気が特徴です。あの香りで食欲をそそられる人もいますが、ニンニク苦手な人の大半は、あのキョーレツな匂いがダメな人たちです。
ニンニクのスタミナアップの効能は、あの匂い成分と関係しています。
匂いの元となっているのは「アリイン」という物質です。ニンニクの薄皮を剥いただけの状態では、それほど強い匂いはしていません。が、つぶしたり、すり下ろしたり、刻んだりすることで、このアリインが
「アリシン」
という物質に変化します。物凄い匂いを発するのはこのアリシンです。
アリシンとビタミンB1
アリシンは、「ビタミンB1」と結合すると「アリチミン」という物質に変化します。そして、腸から吸収されると、再びビタミンB1に戻ります。
ビタミンB1は、糖質(エネルギー源)を分解・吸収するために欠かせない栄養素です。たくさんの糖質を摂っても、ビタミンB1が足りないと、それをエネルギーに変えることができません。逆にビタミンB1をたくさん摂り入れることで、エネルギー代謝を促進し、疲労回復を早めることができます。
しかし、ビタミンB1の吸収量には限界があり、それを超えると、せっかく食べても、栄養が流れ出てしまいます。
ところが、ニンニクのアリシンがビタミンB1と結合したアリチミンは、ビタミンB1のキャパとは別に吸収されていきます。そして、体内で再びビタミンB1に戻れば、代謝の促進効能を発揮します。
つまり、ニンニクを食べると、より多くのビタミンB1が身体に入り、疲れ回復能力がアップして、スタミナが付く、というわけです。
ニンニクパワーを有効に
エネルギー代謝を盛んにするには、エネルギーの元となる肉や炭水化物が足りないと話にならないので、ガッツリ系の食事がスタミナ源になることは確かです。が、スタミナは、肉だけたくさん食べても付きません。
ビタミンB1ほか、食べ物を力に変えるためのいろいろな栄養(ミネラル)が含まれる食品を食べないといけません。野菜や魚もバランスよくちゃんと食べる人が、更にニンニクを食べることで、パワーアップし、夏バテもはねのける無敵の元気な身体を手に入れることができる、ということです。
ニンニクだけばくばく食べても臭くなるだけってことか~!バランスよい食事をだね!