食の豆知識

ミョウガの旬は秋!物忘れ?いえいえ、むしろ集中力上がります

Written by すずき大和

そうめんの薬味などに使われる「ミョウガ(茗荷)」は、古くから日本人に馴染みが深い香味野菜です。

冷や奴に乗せたり、刺身に添えられたり、なんとなく真夏の暑気払い野菜のようなイメージがありますが、ショウガの仲間で、逆に身体を温める効果があるハーブです。

夏に出回っているものはハウス栽培品で、露地ものの旬は、涼しくなる秋シーズンです。



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ミョウガはジャパニーズハーブ

日本オリジナル食文化

ミョウガは中国原産です。大陸との行き来が始まった古代に日本に伝わりました。現在は、日本全土や朝鮮半島を含む東アジアに自生しています。

食材として栽培されているのは、日本と、日本文化の影響が残る韓国、台湾に限られています。原産地の中国では、現在一般には食べられていません。

全国どこのスーパーでも売られていて、日常的に食べているのは世界で日本だけです。

近代、西洋にも和食文化が伝わり、ミョウガも知られるようになります。「Mioga」はそのまま学名になりました。

英語では

「Japanese ginger ジャパニーズ・ジンジャー」
「Mioga ginger ミョーガ・ジンジャー」

と呼ばれています。

夏ミョウガ、秋ミョウガ

日本のミョウガ生産量は、高知県だけで年間5千トン近くあり、全体の80%以上を占めています。高知のミョウガはほとんどがハウス栽培で、通年で出荷しています。

消費のピークは夏なので、6~10月に一気に出荷量が高まります。前半の「夏ミョウガ」は高知のハウスものが多くを締めますが、9月になると、奈良県、秋田県、群馬県産の露地栽培品も多く出回ります。

露地ものは「秋ミョウガ」と呼ばれ、色艶がよく、ふっくらとして大きいです。

「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」という俗説

ウンチクの世代間ギャップ

「茗荷宿(みょうがやど)」は、

“ミョウガを食べると物忘れがひどくなる”

という俗説が題材となっている、有名な落語のひとつです。

落語が庶民の娯楽としてポピュラーだった時代は、一般的によく知られた話でした。ぎりぎり昭和期に子供時代を過ごした世代は、落語のストーリーを覚えていなくても、この「物忘れ俗説」は、一般教養の範囲として知っているようです。

スマホが日常の情報源として育っている世代は、意図的に興味を持って見る分野以外の情報が、自然に耳に入ってくることがあまりありません。落語や古典芸能に興味がない若い人は、ミョウガの俗説を知らない人もたくさんいます。

そんな人たちが、ウンチクとしてネットの中で情報を拾ったり広めたりする場合、俗説が真相のように思い込まれて広まることがよくあります。

ミョウガ俗説の由来として、お釈迦様の弟子の話があります。昭和の世代の多くは、それが「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」説から派生して、後から生まれた逸話であることを知っていました。都市伝説みたいなものですね。

が、最近のネット情報の中には、真面目に、それを本来の由来として紹介する記事がたくさんあります。ネットコンテンツのライターさんが、そういう世代で、情報のソースはネットで拾ってきたものなのでしょう。

お釈迦様の弟子説

ちなみに、ネットで広まっている由来説とはこんな話です。

“お釈迦様の弟子の「周梨槃特(チューラパンタカ)」という人は、自分の名前も覚えられないくらい物忘れがひどい質でした。しかし、釈迦の導きで愚直に修行に勤めるうち、悟りの境地に到達したそうです。彼の死後、お墓の周りに生えた草がミョウガだったため、後世「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」といわれるようなりました。”

お経が全然覚えられず、皆に愚鈍扱いされていた弟子が、悟りを開いた話は本当です。が、当時のインドにミョウガが自生していた可能性は低く、ミョウガを食べる文化もありませんでした。

真相はショウガの効能?

俗説の真相はどこにあるのでしょうか?

ミョウガはショウガの仲間です。両者は中国から同時期に伝わりました。香りの強い芽だったので、ショウガ属はまとめて「芽香(めが)」と和名がつきました。

  • より強い香りのショウガは「兄香(セノカ)」
  • マイルドな香りのミョウガは「妹香(メノカ)」

と呼ばれ、それが転じて

「ショウガ(旧カナ使いではセウガ)」
「ミョウガ(メウガ)」

になったといわれています。

11世紀に活躍した中国の詩人蘇東坡(そとうば)のエッセイの中に、

「生薑(生姜)多食損智」(ショウガをたくさん食べると知恵を損なう)

という記述がありました。ユーモラスな随筆は、後に日本にも伝わり、その一文が、口伝えでショウガとミョウガを取り違えて広まってしまったのだろう、というのが有力な説です。

本当は身体にいい生薬

ミョウガに記憶障害を起こす成分はありません。ショウガもミョウガも、漢方の生薬として、血流を改善したり、内臓の働きを整えたりする効能が知られています。

ミョウガの香り成分は、「アルファピネン」と呼ばれるもので、

  • 脳を刺激して眠気を覚ます
  • 胃の働きを活発にする
  • 血行を促進する
  • ホルモンバランスを整える

などの効果があり、女性の月経不順の際に服用されることもありました。

体調を整える効能から、集中力を高めるハーブともいわれており、物忘れどころか、頭が冴えてきそうな、優れものハーブであるといえるでしょう。ぜひどんどん食べてください。

まさケロンのひとこと

ミョウガを食べても物忘れはひどくならない!むしろシャキッとするって!?ミョウガ料理検索しよ~っと。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。