都会の真ん中のビルの中に「野菜工場」が作られ、いつでも安定して収穫ができる時代、毎日食べる野菜から季節を感じることは、あまりなくなりました。
とはいえ、一時期しか店頭に並ばない「旬(しゅん)」の野菜は、完全に無くなってはいません。
野菜工場では作れないもののひとつ『たけのこ』も、若葉が芽吹き始める頃、晩春から初夏に向かうさわやかな季節のほんの10日間ほどしか、店頭に並ばない季節の恵みです。
なんたって、
竹かんむりに“旬”とかいて『筍(たけのこ)』
ですから。季節を感じる野菜の代表といってもいいでしょう。
知らない人は知っておこう、凄いたけのこのパワー
たけのこの季節は“竹の秋”
たけのこの旬は、あらゆる木々が青々と勢いを増していく時季です。が、そんな中で竹は、緑の葉が見る見る黄色くなり、さわさわと音を立てて散っていきます。そのため、昔の人はこの時季を「竹の秋」と呼びました。
竹が葉を落とすのは、パワーの全てを生まれてくる新芽=たけのこの成長のために注ぐからです。それだけ、たけのこには栄養が目一杯詰まっている、ということです。
恐るべき!たけのこの効能
たけのこは非常に優れた栄養食品です。含まれる栄養素の数も多いのですが、心身両面での健康、そして美容にもプラスとなる希少な栄養素が、他の野菜に見られないほど豊富に含まれています。
『チロシン』は、節のところに白く粒状に固まっている物質です。神経伝達物質や甲状腺ホルモンの原料となり、脳を活性化してやる気や集中力を高めてくれる効果があります。
一番豊富なものは、不溶性の食物繊維『セルロース』です。腸内の有害物質のデトックス効果は絶大で、ダイエットにも良い影響を与えます。
旨味成分は主に、『グルタミン酸』と『アスパラギン酸』です。グルタミン酸は脂肪を付きにくくし、アスパラギン酸は疲労回復に効果的です。
- 味覚の精度を保つのに必要な『亜鉛』は野菜全般の平均の約3倍。
- エネルギーを生み出し、ストレス対策にも有効な『パントテン酸』は約2倍。
他にも、含有量はそんなに多くはありませんが、ビタミンB1・B2、E、カリウムなど、新陳代謝を促し、成人病予報効果の高い栄養素が多様に含まれています。
うちで料理するのは、ハードル高い?
たけのこ料理・・・やらないなぁ
そんな、成人病予防にもダイエットにも効果的な食材ですが、家庭で素材から料理する人が減るご時世
「居酒屋メニューくらいでしか、たけのこは食べないなぁ」
なんて人も少なくないかもしれません。たけのこ料理はけっこう手間がかかりますから。
灰汁抜き、面倒くさすぎ!!
何が面倒かって、それはもう美味しく食べるために必須の“灰汁(あく)抜き”でしょう。
たけのこの灰汁は、主に「シュウ酸」という苦み・えぐみ物質で、摂りすぎると尿路結石のモトにもなってしまいます。
シュウ酸は水に溶けるので、長時間水にさらして抜くこともできますが、そうすると旨味成分も全部流れ出てしまいますから、
「米ぬか」を入れた水に入れて茹でる
という方法がとられます。米ぬかに含まれるカルシウムがシュウ酸と結びついてえぐみを中和し、同時に、脂肪とアミノ酸がたけのこを柔らかくして旨味も引き出す役目をはたします。
その際、たけのこは、
- 旨味が流れ出ないように皮のまま
- ちゃんと火が通るように切り込みを入れて
- 途中で灰汁を取りながら
- 弱火で1時間くらい茹でる
- 火を消したらそのまま8時間くらい置いておく
って、やっぱり面倒くさいでしょう?
でも、ここで手抜きがあると、えぐみが残ったり、旨味が薄くなってしまったりするのです。
灰汁抜きしないで美味しく食べる
灰汁が出る前に食べればいい
面倒くさがりの食いしん坊向け、灰汁抜きしなくても大丈夫な方法、実はあります。
たけのこの灰汁は、掘り出されたことによるストレスから発生します。地面から生えている時にはありません。採れたてすぐならば、灰汁抜きしなくても十分美味しいんです。
自分でたけのこ堀りに行けば一番いいのですが、それも簡単にはいかないので、産直市場などで出荷したての新鮮なたけのこを手に入れるのが、値段も安いし、手っ取り早いでしょう。
「朝採り」のものなら、“刺身(ナマ)”で食べられます。土佐煮やたけのこご飯も、切ってちょっと水にさらすくらいで調理してOKです。
スーパーなどで買う場合も、入荷したその日のうちなら、“焼きたけのこ”で十分イケます。
皮のまま半分に割り、アルミホイルで包んで、コンロで強火の網焼きにします。旨味と香りがナマより凝縮され、焦げ目がほどよく香ばしくなって、それはそれは美味!そして“粋(いき)”な食べ方です。
灰汁抜き済みのも利用して
新鮮なタイミングで買いに行くのも大変な人は、既製品を利用という手もあります。
スーパーには、すでに水煮して真空パックにした製品も売っています。刻んであるもの、味まで付いてお米に混ぜて炊くだけの「たけのこご飯の素」もあります。
皮付きナマのたけのこよりは割高で、中国産などは通年で出回っていて“旬”感は落ちますが、旬の時季に食べればそれなりに気持ちは上がります。
せっかくの春を満喫できる優秀栄養食材ですから、たくさん出回る季節にぜひおうちでも食べてみてください。
美味しいたけのこって癖になるというか、ずっと食べてられるもんね。
あ〜食べたいな〜〜〜