木枯らし冷たい冬の季節、「肉まん」が無性に食べたくなることがあります。アツアツの湯気を立てた肉まんは、庶民には冬場の手ごろなおやつです。
コンビニなどの肉まんは、中華料理の点心「包子(ぱおつ)」が日本風にアレンジされたものです。豚肉あんのスタンダードなもの以外、日本オリジナル種も作られ、今日では
- あんまん
- ピザまん
- カレーまん
- ギョーザまん
などなど、多様な「中華まん」が売られています。
まんじゅうの始まりは肉まん
肉まんは「豚肉あん入りまんじゅう」の略
日本最初の肉まんは、昭和2年に中村屋が発売した
「天下一品 支那饅頭(てんかいっぴん しなまんじゅう)」
といわれています。
肉まん(関西では豚まん)の呼び名は、自然にそう呼ばれたのが先か、商品名になったのが先か、定かではありませんが、戦時中にはすでにその名で記録が残っています。
まんじゅうといえば、日本では甘いあんこの和菓子のほうがポピュラーでしたから、あんこではなく「豚肉のあんが入っているまんじゅう」であることを強調したのでしょう。
本来の饅頭は肉あん入りが基本
が、まんじゅうの語源も、もともとは中国の饅頭(まんとう)です。
中国の最初の饅頭は、小麦粉をこねた皮で牛や豚の肉を包んだ肉まんでした。この饅頭は、実は既に鎌倉から室町時代頃に日本に伝わっていました。
当時の日本は仏教文化の影響で肉食を嫌っていたため、肉まんではなく、野菜あんや甘いあんこのものに変化して広まっていきました。饅頭は「まんず」と読まれ、やがて「まんじゅう」に変化しました。
その後、中国では
- 小麦の生地だけを蒸したパンのようなものを饅頭
- あんの入ったものを包子
と呼び分けるようになります。
大正時代、中国で肉あんの包子を食べた中村屋創業者夫妻が、帰国後それを日本人の口に合うように改良して売り出したのが「支那饅頭」でした。
中国の饅頭、諸葛孔明発明説は嘘?ほんと?
饅頭は三国志起源?
ウンチクネタを拾っていくと、
という説があちこちに書かれています。
諸葛孔明(しょかつこうめい)とは、三国志に出て来る主要登場人物のひとりです。
「三国志って何?」という人、
もしくはゲームのタイトルだと思っている人
のために簡単に解説すると、「三国志」は古代中国の歴史書です。
秦の始皇帝が全国統一した後の漢時代後半、中国は再び3つの大きな勢力に分かれ「三国時代(紀元180~280年頃)」と呼ばれる戦乱の世になります。
その興亡史が三国志です。諸葛孔明は、三国のひとつ「蜀(しょく)」の建国者「劉備(りゅうび)」を支える軍師です。
その後、明の時代(14世紀)に、各地に残る逸話や説話も足して、細部はだいぶ創作を加え、複数の編者により「三国志演義」という小説の形にまとめられました。
読みやすい兵法書のような作りが処世術の含蓄に溢れており、時代や国を超えて評価され、今もなお世界中で広く読み継がれています。日本でも人気が高く、一般に「三国志」というと「三国史演義」の物語も混同されて語られます。
生首の生贄を禁止するために肉まんを作らせた
さて、民間伝承の説話の中に、孔明が肉まんを発明したという話が残っています。
蜀の南部の民族「蛮族」を孔明が征伐した際、祭壇に人間の生首を捧げて祈祷する蛮族の風習を禁止したそうです。代わりに、人の頭に見立てて小麦粉と肉で饅頭を作らせ、それを神に捧げるようにしたといわれます。
なんて逸話付きです。
饅頭の頭の字は、生首の意味だった、ということですね。
本当のところはイマイチ不明
しかし、この「孔明発明説」は真実かどうか怪しい部分もあるといわれています。
三国志も三国志演義も、時の権力が蜀を現在につながる王朝の流れと見なす解釈をしていた中でまとめられたので、
蜀の劉備や孔明を善い役に
敵対する「魏(ぎ)」の建国者「曹操(そうそう)」を悪役に描くエピソードが多くなっています。複数ある説話から、そういうものを選んで伝えた傾向もあるでしょうし、演義の美談や武勇伝は多くが創作されたものです。
知徳の人
天才軍師
として描かれる孔明は、肉まん以外にも、複数の発明品の逸話が語り継がれています。まるでスーパーマンのような人物像です。
が、史実の戦績を見ると、孔明は交渉術に長けた面があるものの、戦略家としては必ずしも優秀な人ではなかった、と思われるフシもあるのです。
人の頭を模した捧げものが饅頭の始まりだったことは間違いないと推測されていますが、それが孔明の指示によるものだったかどうかは、実は定かではありません。
信じる信じないはあなた次第・・・
孔明ファンの皆さんは、どうぞ
「蛮族の野蛮な風習を改めた偉い人」
の話のまま信じておいてください。
「『生首の代替品』といわれると、肉まん食べづらくなるなぁ・・・」
という人は、
「それ、ただの作り話だから」
と思ってください、ぜひ。
肉まんのなにがいいって、「おいしくてボリュームそこそこなのに安い!」ってところだよね。